いったい日本では、どうしてこんなに樹木が美しいのだろう。
西洋では梅が咲いても、桜がほころびても、格別なんら目を驚かすこともないのに、
それが日本の国だと、まるで美の奇跡になる。

その美しさは、書物で読んだ人でも、実際に目で見たら、
アッと口が利けなくなるくらい、あやしく美しいのである。

ひょっとしたら、この神の国では、樹木は遠い世の昔から、この国土によく培われ、
人によく労わり愛されてきたので、ついには樹木にも魂が入って、樹木もまた心を入れて、
礼心を表すものだろうか。

 小泉八雲