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https://www.sankei.com/column/news/180424/clm1804240008-n1.html
【大阪特派員】和食は「大阪料理」から始まった

 大阪といえば食い倒れの町。ところが、「大阪料理」とはあまり聞かない。
江戸前や京料理といえば、それだけでイメージが浮かぶというのに、いったいどうしたことだろう。

 いやいや、たこ焼き、お好み焼きと、大阪名物のいわゆる「粉もん」があるじゃないか−といわれそうだが、大阪人にとってそれらは「おやつ」のジャンル。
少なくとも「大阪料理」というほど、しゃちこ張ったものではないのだ。

 では、大阪料理とは?

 灯台下暗しと、大阪料理会事務局の笹井良隆さんを訪ねた。大阪の料理人でつくる会で、昨年には「大阪料理」(旭屋出版)を刊行している。

 そこには、5つの料理心得、食材第一主義▽食(喰)い味▽日本産の食材を使う▽昆布味を主とする▽大阪人特有の始末の精神がある−とあった。
コンブ味、始末などはいかにも大阪という気がする。でも「食い味」とは何だろう。

 「例えば、食べてすぐにおいしいと思うわけではない。
でも、店を出るときなんかおいしかったなぁ、と思ってまた(客が)戻ってくる味。商都だからこその味です」と笹井さん。

 うーん、まだわかりにくい。そもそも、その出所は、かつて「京の持ち味、大阪の食い味」と言われたことにある。
持ち味とは、あまり労働をしない公家らの好んだ淡泊味で、淡水魚や豆腐、優れた野菜などに合ったものという。
江戸はというと、武家や職人に好まれた「甘辛味」。
一方で、商都・大阪では全国から食材が集まり、商人や旅人が行き交う中で“万人に受け入れられた味”が主流になった。

 「ただしコンブだしです。それもマコンブ(真昆布)」(笹井さん)

 関西では多彩なだしを使うが、主に京都は利尻コンブ、大阪はマコンブという違いがある。
笹井さんによれば、うまみが多く、早くだしが取れて塩コンブなどに二次利用できることから、大阪ではマコンブが好まれた。
一方、「持ち味」を第一とする京都は、特徴が淡く繊細な利尻コンブを。
入ってきた時代も背景も違うそうだが、双方のだしの違いにも歴史と文化が潜んでいる。

 早々に結論をいえば、大阪料理とは日本料理のことだという。
日本のみならず、世界に広がってしまったため、もはやそこに“大阪”が見えなくなってしまっているだけなのだと。
会席料理のルーツも大阪にあったといい、元禄から宝永に年号が変わる1704年頃から、大阪の四天王寺近くに「浮瀬(うかむせ)」など料亭次々と誕生し発展した。

 興味を引いたのは、大阪料理会の相談役・上野修三さんが書いている「浪速割烹の条件」の一つ。
「走り物や珍味はごく僅かとし、味の充つる旬物が大切と知るべし」とある。

 そういえば思い当たるのが、江戸の初ガツオと大阪の戻りガツオだろう。
今では好みの差は少なくなったが、「走り」を好む江戸と「実」を取る大阪という気性の違いがおもしろい。食はまさしく風土を反映している。

 では、現代の大阪料理とはどんなものか。
大阪検定の公式テキスト「大阪の教科書」(創元社)に「大阪十大料理」が紹介されていたので拝借しよう。

 てっちり▽大阪鮓(ずし)▽うどん▽鰻まむし▽かやく御飯▽関東煮▽しゃぶしゃぶ▽オムライス▽焼き肉とホルモン▽その他としてハリハリ鍋など−。

 しゃぶしゃぶは大阪・北新地のスエヒロが考案、オムライスは心斎橋の北極星が発祥だ。関東煮とはいわゆるおでん。
鰻まむしは、ウナギを腹開きにして直焼きし、炊きたての米に載せて「まむす」ことで軟らかく仕上げたもの。
起源はどうあれ「大阪の料理」がうまいことは間違いない。