東京・大阪・福岡競わす 国際金融都市構想で首相
海外人材向け税優遇検討

菅義偉首相は日本に世界の金融ハブをつくる「国際金融都市構想」の実現に向け、東京、大阪、福岡の3都市を競わせる。海外から専門知識を持つ高度人材を呼び込むため、減税措置や在留資格の特例制度を検討している。各都市の競争を通じて日本全体の受け入れ環境を底上げする。

首相は5日の日本経済新聞などのインタビューで「海外から金融関係の人材を呼び込むことで市場の活性化が期待できる」と述べた。
「東京の発展を期待するが、他の地域でも金融機能を高めることができる環境をつくりたい」とも語り、東京以外の都市を国際金融都市の中心拠点とする可能性もにおわせた。

政府はこれまで金融機関の本部や本店が集中する首都・東京を国際金融都市の本命として動いてきた。東京は国家戦略特区として在留資格の特例措置を適用するなどの優遇を受けている。

それでも東京は国際的に出遅れた状況だ。

英シンクタンクZ/Yenグループなどが9月に公表した国際金融センターランキングは首位はニューヨーク、2位はロンドン、3位は上海だった。東京は4位につけるが、税率の高さや言葉の壁による暮らしにくさなど、以前から抱える課題を改めて指摘された。

首相は「税制上の措置や行政の英語対応、在留資格上の問題にスピード感をもって政府一体で取り組む」と強調し、国を挙げた対策を示唆した。

当面は日本の中心拠点を1つの都市に絞らず、全国一律で税制や在留資格の優遇策を検討する。日本全体を活性化しつつ、そのなかで着実に成果をあげた都市を将来的に中心拠点に絞り込み、集中的に育てる戦略だ。

具体的な施策も急ぐ。年末の2021年度税制改正は高度な知識を持つ外国人材の所得税や相続税、外国企業の法人税減税をテーマとする見通しだ。英語対応の予算整備の充実や在留資格の延長なども視野に入れる。

6月には中国が香港国家安全維持法を施行し、香港からは米大手資産運用会社などが撤退を表明した。そうした金融機関や人材の受け皿も狙う。

もともと誘致に関心を示していた大阪や福岡は攻勢を強めている。

大阪府の吉村洋文知事は9月の記者会見で「国際金融都市としての地位を確立するのは非常に重要なことで、大阪がアジアの金融都市の中心地を占めるのが目指すべき姿だ」と訴えた。

大阪はネット証券などを手掛けるSBIホールディングスと連携する。同社は香港事業の撤退を決め、大阪・神戸に国際金融都市をつくる計画を持つ。

同社の北尾吉孝社長は10月5日、首相と面会した。構想について意見交換したとみられている。

福岡でも9月、福岡市や地元企業など産官学で外資系金融機関の誘致を目指す推進組織ができた。
アジア各国への地理的近さを強みの一つとする。政府の税制優遇に加え、英語で対応できる施設の拡大など外国人材の受け入れ環境の整備を検討する。

東京も国内最大都市の優位性をアピールして対抗する。小池百合子知事は16年の就任当初から国際金融都市構想を都の成長戦略の柱に据えてきた。

21年秋には誘致策をまとめた構想を改定する予定で、10月7日に準備会合を開いた。小池氏は「国際金融を巡る状況は激動を続けている。厳しい都市間競争を勝ち抜くため、これまでの積み重ねを強めたい」と力説した。
https://r.nikkei.com/article/DGKKZO64821700Z01C20A0PP8000