リニア効果で名古屋が脱・3番手? 大阪にオフィス賃料肉薄、「GDP」は逆転
中日新聞 2018年11月19日 朝刊
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2018111902000055.html

 2027年を目指すリニア中央新幹線の開業に向け、大都市としての名古屋の
価値が高まっている。大阪に大きく水をあけられていたオフィス賃料は、その差
が20年前の十分の一以下に縮まった。商業地の地価や都道府県版の国内総
生産(GDP)「県内総生産」では大阪と名古屋の逆転現象も。名古屋は東京、
大阪に続く「三男坊」という長年の構図に変化の兆しが見られる。

 オフィス仲介の三鬼商事(東京)によると、名駅や伏見、栄の「名古屋ビジネス
地区」と、大阪中心地の一坪当たりの月額オフィス賃料の差は今年10月時点で
321円。1998年で約3700円、2008年でも約1300円あった差を近年一気に縮めて
いる。

 賃料上昇の背景には、好業績の自動車産業が支える堅調な地域経済と、利便
性が劇的に高まるリニア開業への期待がある。

 名駅周辺では相次ぐ再開発で新たなオフィスが大量供給されたが、かえって郊
外企業の都心移転の需要を呼び起こした。オフィス空室率は17カ月連続で低下中。
空きオフィスを求める動きは名駅周辺から伏見や栄地区に波及し、地域全体の賃料
を押し上げている。

 「リニア開業で名古屋は日本の最大マーケットの中心になる」。三菱UFJリサーチ
&コンサルティングの加藤義人執行役員は、名古屋から二時間で到達できる範囲
が大きく広がる点に注目する。二時間圏内の人口は、リニアの名古屋開業時で
名古屋が東京(品川)や大阪を抜き、大阪延伸でもトップを保つ見通しだ。

 二時間圏内に入る首都圏は、現状の東京駅や品川駅周辺の「点」から、名古屋開
業時には東京23区の全域や千葉、埼玉、神奈川県の都市部などの「面」に拡充する
とみられる。

 加藤氏の試算では、東京駅周辺にオフィスを構える五百人規模の会社が名駅周辺
に移れば賃料が下がり、年間3億円のコスト削減になる。「リニアで四十分なら『名古屋
が本社でも良い』と考える企業が出てくるはずだ」と期待する。

 名古屋の「脱・三男坊」をうかがわせるデータは既にある。基準地価では昨年、名古屋
の最高地点が大阪の最高地点を初めて逆転。県内総生産も八月公表の一五年度に
愛知県が大阪府を抜いて全国二位となった。

名古屋と大阪の都市比較
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