「カジノで観光客が集まるなんて幻想」――観光カリスマが語る
デイリー新潮 8/21(火) 7:31配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180821-00546419-shincho-soci

 7月20日にいわゆるIR法案(カジノを中心とする統合型リゾート施設の設備
推進を目指す法案)成立した。別名「カジノ法案」とも呼ばれる同法が通った
ことで、今後は日本でも本格的なカジノの開設が目指されることになる。

 同法の背景には、カジノ施設の開設でインバウンド(訪日外国人)を取り込も
うという一部政界・財界の期待があるのは周知の通りである。しかし、カジノが
本当に経済の起爆剤になりうるのだろうか。

 実際、観光の専門家の中には、「カジノは経済の起爆剤にならない」と懐疑的
な声が根強いのだ。地域振興の現場で奮闘する二人の専門家が「ぶっちゃけ」
で語り合って話題を呼んでいる『観光立国の正体』では、シンガポール在住経験
も持つ藻谷浩介氏と、スイス在住で各国の観光事情に詳しい観光カリスマの
山田圭一郎氏が、次のように語っている(以下、引用)。

■発想が「リゾート法」と一緒

藻谷:国内と海外の認識の差ってことでついでに言うと、カジノはどう思う? 

山田:正直、「何を今さら」という感がぬぐえないです。カジノを作ったところでうま
くいっているところなんてほとんどないですよ。カジノだけでなく、IR(Integrated
Resort:統合型リゾート)そのものをちゃんと理解してない人が多いです。

藻谷:IRとしてうまくいっているのは、シンガポールのマリーナベイサンズと、ラス
ベガスやマカオの一部くらい。圧倒的多数はうまくいっていない。

山田:IRでうまくいっているところも、カジノだけで儲けているわけではないですから
ね。最近、マカオはエコツーリズムも推進しています。ポルトガル統治時代の歴史
的建造物もかろうじて残っているので生活文化を活かそうとしている。

藻谷:マリーナベイサンズも、日本人はあの奇天烈なビルの上にあるプールに入っ
て喜んでいるだけ。カジノに行っている人はほとんどいない。ラスベガスでも日本人
客のほとんどはショーや食事を楽しむのが主目的です。対して中国人は賭け事が
大好きですが、七割が華人のシンガポールでは国民は高い入場料を払わねばカジノ
には入れない。ギャンブル中毒者の増加を防ぐためです。ですからマリーナベイ
サンズの場合、中国本土からのお客が頼りです。ここが賑わっていた理由のひとつ
に中国共産党の腐敗官僚たちのマネーロンダリング機能を担っていたこともあるら
しい。それも習近平の反腐敗闘争で相当減ったとか。

山田:アメリカのカジノだって、ラスベガスの一部を除けばうまくいってない。アトランテ
ィックシティなんて落日の観光リゾート地です。韓国にもカジノが各地にあるけどそれ
で韓国経済が潤っているという話は聞いたことがない。