名古屋城木造化 シンボルになり得るか

中日新聞Web社説より(抜粋)  

http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2018070402000110.html
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 名古屋城天守閣の木造再建で「忠実な復元」を訴える河村たかし市長はエレベーター設置を拒否している。
だが、巨額な税を投入する公共施設だ。このままで本当に市のシンボルになり得るのか。  

河村名古屋市長は「天守閣には実測図があるから強烈な本物性がある」と、史実に忠実な復元にこだわる理由を訴えた。

 選挙戦で市長は「百年で大抵、国宝になります」と述べたが、あくまで実測図に基づく「木造新築」である。築城時の天守
が現存する姫路城などの国宝と同様に価値を論じるのは無理があろう。 

 市長は五月末、はりや柱が忠実に復元できないとして、エレベーターを設置しない方針を表明。障害者団体は抗議のハンスト
を行い、「高齢者や障害者など誰もが登れる名古屋城に」と訴えた。市長提案の、搭乗可能なドローンなど十一の「新技術」は
現実味に乏しく、むしろ反発を強めた。



 現在の法律では火災対策のスプリンクラー設置なども必須であり、「忠実復元を理由にエレベーターだけ排除するのはおかしい」
とする障害者らの訴えは、すこぶる合理的な問題提起である。

 市民の不戦平和への思いが詰まった現在のコンクリート製天守には、文化庁も言うように「本物」の価値がある。
あえて「本物」を壊して造る−。その意味をいま一度、十分かみしめるべきだ。