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横浜のオフィス賃料、名古屋抜く 6年ぶり
2016/10/25 6:30

日経産業新聞セレクション

地方都市のオフィスビル賃料の動きに変化が起きている。横浜の賃料がおよそ6年ぶりに名古屋を上回った。横浜は供給が少ないうえ、みなとみらい21地区を中心に拠点統合などの需要が堅調だ。東京に比べて賃料が安いことも、需要増の要因となっている。

オフィスビル仲介大手、三鬼商事(東京・中央)によると、9月の横浜の平均募集賃料は3.3平方メートル1万809円。
前年同月に比べ2.8%上がった。名古屋は1万793円とほぼ横ばいだった。
2010年11月以降、横浜の賃料は名古屋を下回っていたが、16年8月に再び逆転した。

 横浜はオフィスビルの新規供給が少ない。
三鬼商事によると、横浜駅周辺やみなとみらい21といったビジネス地区で、延べ床面積が1650平方メートル以上の新築ビルは、ここ1年で1棟もない。名古屋は5棟ある。

 需要は好調だ。野村総合研究所は横浜市内の拠点を中心に、17年1月に完成予定の「横浜野村ビル」に移転集約する。
業務効率化に加え、BCP(事業継続計画)対応も考慮に入れた。富士通系の業務用スキャナー大手、PFUは川崎市から首都圏の本社機能を移した。
日本KFCホールディングスも東京都渋谷区から本社を移し、本社機能と商品開発機能を集約する。横浜市は助成金を出して拠点進出を促している。

 横浜の賃料は東京に比べると安い。都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の9月の賃料は1万8336円。
横浜は都心5区を4割下回る。供給減と需要増で空室率も下がっている。9月は前月に比べ0.2ポイント低い5%。
9カ月連続で下がった。三菱地所の「横浜ランドマークタワー」のオフィス部分は「ほぼ満室」(同社)という。

 名古屋も「製造業を中心に需要は堅調」(三鬼商事名古屋支店の川口真弥支店長)だ。
周辺の自治体から名古屋駅前の大型ビルに本社を移す動きもある。一方、賃料の推移をみると、地区によって温度差がある。
名駅地区の賃料は前年同月と比べて上昇しているが、伏見や栄といった地区では下がっている。

 地方都市はリーマン・ショック後、オフィスビル供給が大きく減った。
大都市と比べて需要も少なかったため、供給も増えないのが現状だ。
一方、地方でも業績拡大で増床をする企業も出始め、空室率が下がってきている。
大都市中心の開発が続けば、地方都市のオフィス賃料は上がる可能性がある。

(商品部 斎藤公也)

[日経産業新聞 10月25日付]