2017年4月23日 中日新聞 朝刊
名駅に「名古屋の長城」? 名鉄再開発ビル、期待と懸念
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2017042302000069.html

 名古屋鉄道が名駅再開発の全体計画で建設構想を明らかにした巨大高層ビルの横幅は、
南北に四百メートルにも及ぶ。名鉄は「あくまで現段階のイメージ」と説明するが、
建築の専門家によると、これだけの横幅の高層ビルは世界的にも珍しいという。
名古屋の求心力を高める象徴的な建物に期待が高まるが、「まさに壁だ」と景観や環境への
懸念も出ている。

 「南北に長い敷地特性を生かし、周辺のビルとの差別化を図る」。計画を発表した三月末の記者会見で、
安藤隆司社長は巨大ビルを建てる意図をこう説明した。

 再開発区域の南側には、大学やホテルが新設された笹島地区が広がる。計画では、
幅四十メートルの太閤通をまたぐ形でビルが整備されるが、中京大の内田俊宏客員教授(地域経済)は
「名古屋の街は幅が広い道路が地域を分断していた。南北が一体化した再開発ビルにより、
名駅のにぎわいを笹島地区に広められる」と分析する。

 国内外の駅ビルを見ると、横幅が長い建物は珍しくない。一九九七年完成の京都駅ビルは
東西四百七十メートルあり、巨大建築物が多い中国の北京西駅は地図データによると
七百メートルほどの幅がある。ただ、それぞれの高さは六十メートルと九十メートルで、
名鉄の計画する高さ百六十〜百八十メートルのビルは前例がない規模だ。

 「名駅周辺の再開発ビルの多くは『優等生的』で、印象に残る建物は少なかった」。
東北大大学院の五十嵐太郎教授(建築学)は、南北四百メートルという長さを生かしたビルに
期待を込める。「記憶に残る建物は、それ自体が人を引きつける魅力になる」という。

 一方で、景観面の懸念も聞かれる。名古屋大大学院の宮脇勝准教授(都市計画・景観)は
「名鉄の計画案は巨大な壁のようなもの。駅前の空間も狭く、圧迫感を感じる」と指摘。
広い壁面が強いビル風を引き起こす可能性に触れ「建物を分けた上で、親しまれるデザインを
目指した方が良い」と話す。

 今回の再開発ビルは、名古屋市が四月に実施した規制緩和により環境アセスメントの対象
から外れる。名鉄関係者は「アセスが不要になれば開発は早くなるが、いずれにせよ、
地元に受け入れられないようなビルにはしない」と強調。別の関係者によると、再開発ビルの低層部分の高さを、
隣接するJRセントラルタワーズの低層階とそろえるなど、景観が連続するような
配慮も検討するという。

 五十嵐教授は、ガラス屋根に覆われた巨大な吹き抜け空間など、特徴的な構造の京都駅ビルを引き合いに、
「建設時は景観論争を呼んだが、街のシンボルとして定着しつつある。名鉄のビルも、道路を
またぐ部分に意匠をこらすなど、面白い試みに挑んでほしい」と注文した。

名鉄の計画を基にした再開発ビルの大きさのイメージ
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/images/PK2017042202100299_size0.jpg
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/images/PK2017042202100300_size0.jpg