開港150年目を迎えた神戸港。
ウオーターフロントの整備を進める神戸市は2月、メリケンパークの改装に合わせ、
新港第1突堤につながる海岸道を「プロムナードデッキ(遊歩道)」にする事業に乗り出す。
路面を舗装し、街灯を設けて港をロマンチックに演出する。

ところが、遊歩道の計画地沿いには、約7年前に廃屋になった国の庁舎が残ったまま。
同市は景観を理由に撤去を求めているが、調整が難航する国は“沈黙”を続ける。
(安藤文暁)

1階ガラス窓に「閉鎖」の張り紙。
中をのぞくとソファや資材がほこりをかぶっている。
鉄骨7階建ての延べ床約4600平方メートル。
国の神戸第2地方合同庁舎の別館(神戸市中央区波止場町)だ。

管理する第5管区海上保安本部によると、2009年の耐震調査で強度不足が分かり、使用を禁止した。
東隣の本館の来庁者向け駐車場にするよう近畿財務局などに要望しているが、予算措置は見送られている。

理由の一つは地方税法。
国有地は都道府県や市町村の土地と同じく固定資産税が非課税で、
近畿財務局は「取り壊しだけの予算は優先順位が低い」とする。

さらに駐車場にする際は、土地使用目的の変更手続きが必要。
ガスや上下水の配管が、業務を続ける東隣の本館と真下でつながっている上、登記も本館敷地との境界がないため、
取り壊し予算が先か、分割措置が先かで議論が煮詰まっていないという。

一方、神戸市は11年にウオーターフロントの構想をまとめ、
神戸第2地方合同庁舎の本館、別館ともに「市街地から港の景色を遮っている」として、国に建物の撤去や移転を求め続ける。