東京への人口一極集中の必然とメリットを理解すべき時が来ている
http://d.hatena.ne.jp/ta26/20160719

世界に目を転じると、都市への人口集中の傾向は世界中のトレンドといえそうだ。
ただし、その原動力は従来型の製造業やサービス産業ではない。
社会学者のリチャード・フロリダは著書『クリエイティブ・クラスの世紀』2で、新たな経済の支配階級であるクリエイティブ・クラスが主導する経済発展はメガ地域(都市)に集中し、世界のどこであれその都市は相似形になっていくと述べる。

エンリコ・モレッティの主張が正しいとすれば、日本でもクリエイティブ・クラスを増やし、活動を活発にし、人口が集中する都市の環境を(分散することではなく)改善していくことが、
付加価値の高い『イノベーション産業』において日本の競争力を強くし、さらには雇用を生んでいくことにつながる。逆に言えば、これができなければ、日本には『イノベーション産業』は育たず、海外のどこかの都市に負けていくことを意味する。
まさに、近未来は国家間の競争ではなく、都市間の競争になるであろうことをリチャード・フロリダも予見している。

だが、ちょうど今東京都知事の選挙戦が始まっているが、このような観点での都市育成のビジョンを持っている候補は見当たらない。
(いるのかもしれないが、少なくとも伝わってこない。)企業単位で見ても、集積や近接性の重要性は必ずしも正しく理解されていないように思えてならない。
単純に地価等のコストの安さだけでオフィスの立地を決めて、しかも集中より分散が良いと考えている経営者が多いように見える。
このような、経営者のマインドの後進性は明らかに日本企業全体の競争力を削いでいる。
日本で従来型の企業から『イノベーション産業』への脱皮がうまくいっていないのも、ここにも原因の一端があることは間違いない。


もちろん、これは東京に若年層を吸い取られている地方から見れば、聞きたくもない議論かもしれない。
『クリエイティブ・クラス』などという階級の役割を重要と認めることは、同時に、現在でも急速に進む所得格差を所与として受け入れていくことも意味している。
『一億総中流』幻想から抜け切れていない多くの日本人にとっては、嫌悪感さえ感じてしまうかもしれない。
特に選挙等で票に結びつけることは難しく、誤解されて票を失ってしまう恐れもあるだろう。
しかしながら、人口減少社会が進行する現実を受け入れれば、地方は地方で集積を進めて、魅力的な地方都市を形成していくこと、それによってイノベーション人材を引きつけるように努めることは避けられないはずだろう。
そのために必要なことを貪欲に学ぶ必要もあるはずだ。