ループ状のビル、階段状の緑…すごい「うめきた」2期のまちづくり案…よぎる「新国立」の二の舞

http://www.sankei.com/west/news/150919/wst1509190007-n1.html

 「大阪最後の一等地」と呼ばれるJR大阪駅北側の「うめきた」2期エリアのまちづくり準備が進んでいる。大阪市が既に民間からデザイン案を1次募集し、
ループ状の巨大ビルや階段状にせり上がる緑など驚くような計20案が優秀な提案に選ばれた。
ただ、実現性が疑問視されるほど斬新なデザインがあだとなり、工事費が膨張し、結局は計画が白紙撤回された新国立競技場(東京)の二の舞の不安もよぎる。
おもしろい発想が好きな半面、損得勘定には厳しいのが大阪の土地柄。あなたなら、どの案を選びますか−。

斬新アイデア

 大阪市は2期エリアの開発を民間主導で進めるため平成25年10〜12月、まちづくりのデザインを1次募集した。
46事業者が名乗りを挙げ、40事業者が実際にデザイン案を含む提案書を提出した。

 審査の結果、「総合的に優秀な提案」と「プランニングやデザイン等が優秀な提案」それぞれ10事業者が選ばれた。

 「総合的に優秀な提案」の10事業者は、竹中工務店▽大林組▽大阪ガス▽三菱地所▽オリックス不動産▽阪急電鉄▽住友不動産▽積水ハウス▽昭和設計▽大和ハウス工業(グループの場合は代表法人)。

 なかにはデザインには、ループ状にうねる巨大ビル(竹中工務店)や、ビルの壁面を何層もの緑の層が階段状にせり上がるデザイン(積水ハウス)など、大胆な内容も含まれる。

 一方、「プランニングやデザイン等が優秀な提案」の10事業者にも、巨大なスロープがらせん状にうねり、最上部に桜並木を配したデザインや、
西側に向かうほど広大な緑の平面がせり上がるデザイン、無数の水田を張り巡らせたようなデザインなどがあり、こちらも負けてはいない。

本当に実現できる?

 ここで、どうしても気になるのが「アンビルド(実現しない建築)の女王」とも揶揄(やゆ)される建築家、ザハ・ハディド氏が新国立競技場に、
技術的に極めて難易度の高い2本の巨大な「キールアーチ」をデザインし、工費が想定よりも高騰したことで白紙撤回された問題だ。

 もちろん、2期エリアの場合、開発は民間主導で進むため、多額の公費が投入される新国立競技場とは事情が異なる。
工事費の増大は採算性として事業者の自己責任としてはねかえってくるまでだ。

 ただ、2期エリアも道路や下水道の整備など基盤整備に関わる部分は、国や市などからも公費が投入される。市によると、事業費の見通しは道路や下水道の整備費などが262億円。
これに都市公園の整備費として202億円も加わる。今回民間が提出したアイデアにも、こうした都市公園整備計画などが反映されている。

 市は1次募集でデザイン実現に必要な工費額の上限は設けてはいないが、条件には「事業実現性」とも明記している。

 このため、市の担当者は「いくらでも予算をかけるという、あまりにも突飛なデザインは1次審査から排除される」と説明する。

工費は非公表の可能性も

 市は早ければ来年度中にも、今回の計20事業者を対象に2次募集を実施。さらに詳細なデザイン案などの提出を受け、最終的な開発事業者を決める。

 2次募集に寄せられるデザイン案は、改めて一般にも公表される。

 ただし事業者が決まった段階でも、「民間なので、内部積算した工費額を公表するメリットはない」(市の担当者)。
つまり、この時点では具体的な工費の額は、市民に明らかにされないとみられる。

 市が2期エリアの完成時期として想定するのは早ければ平成34年度。しかし、この段階でも最終的な工費額は公表されない可能性はある。

 デザインの斬新ぶりが目を引く今回の応募案。実現性が疑われ、最終的に白紙撤回に追いこまれた新国立の二の舞は避けたいところだ。