今日の社説
2015/10/25 01:23
政府機関の移転 「東京国立工芸館」を石川に

国が進める政府機関の地方移転は、「地方創生」の先行きを占う試金石になるだろう。
現在、鹿児島県を除く42道府県が69機関の誘致を提案しており、石川県は4機関、富山県は4機関6部門の移転を要望している。
移転には省庁側の強い抵抗が予想され、ハードルは相当高いと思わねばならない。
政府は来年3月までに移転対象機関と移転先を決定する方針だが、必ずしも首都圏に必要ない政府機関は原則として移転させるという強い決意をあらためて関係省庁に示してほしい。
企業の本社機能を地方に移転させる財政支援策とともに、政府機関の地方移転を着実に進めたい。
石川県は産業技術総合研究所、情報通信研究機構、東京国立近代美術館工芸館、農林水産研修所の移転を提案した。
このうち、工芸館は現在、旧近衛師団司令部庁舎(重要文化財)を再利用した施設にあり、文科省所管の独立行政法人・国立美術館が運営している。
明治以降の染織・陶磁・ガラス・漆工・木竹工・金工などの工芸作品約3300点を所蔵しているが、
所蔵作品展の年間入場者数は2014年度実績で約5万6千人と、本館の3分の1以下に過ぎない。
東京には主要な美術館だけでも100施設近くあるだけに、どうしても目立たない存在になっているのだろう。
石川県は移転候補地として、文化施設が集中する兼六園周辺を想定している。
移転が実現すれば、「工芸王国」石川を象徴する施設として脚光を浴びるに違いない。
一方、富山県は医薬品医療機器総合機構のジェネリック医薬品等審査部、国際部、アジア医薬品・医療機器薬事トレーニングセンター
▽国立医薬品食品衛生研究所の薬品部▽消防庁消防大学校消防研究センターの火災災害調査部▽教員研修センターの英語教育やキャリア教育の指導者研修機能の移転を要望している。
医薬品医療機器総合機構の一部や国立医薬品食品衛生研究所の薬品部の移転先は、射水市の県薬事研究所を候補地に挙げている。
「とやまの薬」をPRし、地場産業の振興にもつながるだけに、ぜひとも実現させてほしい。