露伴とゆうひとは、学校を出た後2年ばかり北海道で電信技師をしていたのですが、
その文章に北海道に関する記述はあまり無かったような気がします。「突貫紀行」
冒頭の、小樽から函館までのほんの数ページくらいしかなかったのではないかしら。
この人は、自分は日本橋に産湯をつかった江戸っ児でしかも愛宕の石段がいくつ
あるかをも知らぬくらいの出不精である(酔興記…だったかな)とか、旅行の
準備で大騒ぎするのは愚の極点、野呂間の雑兵、頓痴奇の大将(乗興記)だとか
書いているわりには当時としてもかなりの健脚で、ことに明治の後半まだまだ
不便な時代に東北から九州、伊豆諸島なんかに出かけては俳匠の跡を訪ねたり
蓑笠つけて釣りを楽しんだりしています。幸いに、露伴全集の第14巻(紀行)は
市場では不人気で、ネットで古本検索をするとなぜかこれだけバラで一冊売りに出て
いたりします(しかも数百円)。狐さんもぜひいちどご覧なさい。
旅先で読むには軽いものがよいので、短い文章類が載っている「雑纂」「付録
(これも結構バラで買える)」が一番のお薦めなのですが、これは実に厚くて重い。
旅に持っていくなら、全集第31巻随筆3。こいつが手頃です。「折々草」「潮待ち草」
なんて日本の現代文学の宝みたいな随筆がつまっています。

…とここまで書いて念のため調べたら、岩波文庫から随筆集が2冊出てますねw。
中味目録は不詳ですが、なにがおさめてあるにせよ、大文章なことに間違いは
ありません。次回の旅のお供にはぜひ。