ENCOUNT編集部2022.07.21
https://encount.press/archives/333768/
ハリウッドや韓国映画に大きく水をあけられ、低迷が続く日本映画界
ハリウッドや韓国映画に予算や規模で大きく水をあけられ、長らく低迷が続いている日本映画界は、長引くコロナ禍や相次ぐ性加害報道が追い打ちとなり、今まさに大きな岐路に立たされている。なぜ日本ではハリウッドや韓国映画のような世界的大ヒット作が生まれないのだろうか。「パッチギ!」などの代表作で知られる井筒和幸監督に、日本映画の可能性と限界を聞く。(取材・文=佐藤佑輔)
――日本映画の現状について。
「日本映画は日本経済と一緒でまったくダメ。手堅く稼ごう、とにかく採算取れたらいいとしか考えてないから。映画なんてのはもともと大バクチなのに、リスクを分散させてばかりで、バクチ的な思考が消えてしまったね。最初から製作費を回収できるものにしか手をつけない。大手の出版社から100万部出てる、漫画も売れてます、適当なアイドル系かトレンド役者を使ってあんまり予算もかかりません。3億円規模の小っちゃな映画ばっかりだよ。誰と恋して、誰が死んで、犯人が捕まったとか、ごまんとあるウソまみれの話。しみったれてるよ。
韓国にもいつの間にか完全に出し抜かれた。韓国は製作費がかかろうが今までにない面白い話なら作ってみろよとリスクを取って冒険させる。日本にも昔はそういう人がいたけど、今のプロデューサーはみんなサラリーマン。ただの月給取り、自分がいかに社内でポジションを守れるか、首切られないかとそればっかりだよ」
――なぜ日本映画はリスクを取らなくなったのか。
「狸の皮算用で失敗ばっかりしてるからだよ。日本映画はそういう投機的な、冒険主義の時勢じゃなくなったということ。今はみんな会社同士の、委員会制で金を集めてリスクを分散させる時代。3億円の映画を2000万ずつ15社で分担すれば、たかが2000万だから、コケたって痛くもかゆくもない。欠損処理だから15社の意見を聞いて、宣伝になればいいやとつまらん映画ばっかになるんだよ。
まあ、80年代で終わったんじゃないかな。俺らが角川で撮ってたのが最後。角川のオーナーは冒険主義で、どこの馬の骨かも分からない新人監督たちに大枚はたいて好き勝手にいろいろとやらせてくれた。その代わり、投入したものは絶対に回収するぞ、当ててやるぞというすごみ、勢いがあった。ハイリスクハイリターンという考え方は角川時代で終わったね。その時代が戻ってくること? もうないでしょ。独立映画プロデューサーが出てこない限り。みんな会社勤めのサラリーマンばっかりだから、役所と同じ、自分の保身しか考えてない。そりゃそうでしょ、適当に小銭商売できてりゃいいんだから」
――独立映画プロデューサーが出てくるためには何が必要なのか。
「金なんか持ってなくたっていいんだよ。借りてくる能力があれば。ハリウッドのプロデューサーって、オールアナザーマネーって言って、私財を投じて映画なんか作らない。全部他人の金、日本だってそれが基本。ヘッジファンドと一緒で、他人から100億借りて企業をM&A(買収)してショーをする。借りる能力っていうより、簡単に言えばだます能力だな。
昔からだけど、金を出す方は出す方で、余ってるとか、何かの名目に充てた節税対策だとか、留保金を何とかしないといけないとか、税務署に持ってかれるくらいなら自社の宣伝費で遊んでやれとか。いわゆる資本家、資産家のような、あぶく銭を出してくれる人がいないとどんなプロデューサーでも成り立たない。複数の事業を展開してて、ポンと何十億も投げうってくれて、『あの映画は俺が作ったんだ!』って。これがハリウッドの世界だよ。映画自体に価値があって、これを作る権利を買うんだという考え方が日本にはない。だから何千万でも回収しなきゃと思っちゃう。対価を払って権利を買ったはずのに、それを失ったと思っちゃうんだよな。だから大衆娯楽主義をはびこらせるしかなかった。
クラウドファンディング? しょんべんみたいな話だよ。人様から2万円ずつもらって、ちりも積もれば1000万円になりました、エンドロールで500人のクレジット出しましたって、そんな映画見たくもないだろ。そんなのどっかの市民ホールでかけて終わりよ。そんなみみっちい話じゃないはずなんだよ、本当は」
「小説や漫画を元にしたウソ話ばかり」 日本で骨太な作品が生まれないワケ
※長文の為以下リンク先で
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ハリウッドや韓国映画に大きく水をあけられ、低迷が続く日本映画界
ハリウッドや韓国映画に予算や規模で大きく水をあけられ、長らく低迷が続いている日本映画界は、長引くコロナ禍や相次ぐ性加害報道が追い打ちとなり、今まさに大きな岐路に立たされている。なぜ日本ではハリウッドや韓国映画のような世界的大ヒット作が生まれないのだろうか。「パッチギ!」などの代表作で知られる井筒和幸監督に、日本映画の可能性と限界を聞く。(取材・文=佐藤佑輔)
――日本映画の現状について。
「日本映画は日本経済と一緒でまったくダメ。手堅く稼ごう、とにかく採算取れたらいいとしか考えてないから。映画なんてのはもともと大バクチなのに、リスクを分散させてばかりで、バクチ的な思考が消えてしまったね。最初から製作費を回収できるものにしか手をつけない。大手の出版社から100万部出てる、漫画も売れてます、適当なアイドル系かトレンド役者を使ってあんまり予算もかかりません。3億円規模の小っちゃな映画ばっかりだよ。誰と恋して、誰が死んで、犯人が捕まったとか、ごまんとあるウソまみれの話。しみったれてるよ。
韓国にもいつの間にか完全に出し抜かれた。韓国は製作費がかかろうが今までにない面白い話なら作ってみろよとリスクを取って冒険させる。日本にも昔はそういう人がいたけど、今のプロデューサーはみんなサラリーマン。ただの月給取り、自分がいかに社内でポジションを守れるか、首切られないかとそればっかりだよ」
――なぜ日本映画はリスクを取らなくなったのか。
「狸の皮算用で失敗ばっかりしてるからだよ。日本映画はそういう投機的な、冒険主義の時勢じゃなくなったということ。今はみんな会社同士の、委員会制で金を集めてリスクを分散させる時代。3億円の映画を2000万ずつ15社で分担すれば、たかが2000万だから、コケたって痛くもかゆくもない。欠損処理だから15社の意見を聞いて、宣伝になればいいやとつまらん映画ばっかになるんだよ。
まあ、80年代で終わったんじゃないかな。俺らが角川で撮ってたのが最後。角川のオーナーは冒険主義で、どこの馬の骨かも分からない新人監督たちに大枚はたいて好き勝手にいろいろとやらせてくれた。その代わり、投入したものは絶対に回収するぞ、当ててやるぞというすごみ、勢いがあった。ハイリスクハイリターンという考え方は角川時代で終わったね。その時代が戻ってくること? もうないでしょ。独立映画プロデューサーが出てこない限り。みんな会社勤めのサラリーマンばっかりだから、役所と同じ、自分の保身しか考えてない。そりゃそうでしょ、適当に小銭商売できてりゃいいんだから」
――独立映画プロデューサーが出てくるためには何が必要なのか。
「金なんか持ってなくたっていいんだよ。借りてくる能力があれば。ハリウッドのプロデューサーって、オールアナザーマネーって言って、私財を投じて映画なんか作らない。全部他人の金、日本だってそれが基本。ヘッジファンドと一緒で、他人から100億借りて企業をM&A(買収)してショーをする。借りる能力っていうより、簡単に言えばだます能力だな。
昔からだけど、金を出す方は出す方で、余ってるとか、何かの名目に充てた節税対策だとか、留保金を何とかしないといけないとか、税務署に持ってかれるくらいなら自社の宣伝費で遊んでやれとか。いわゆる資本家、資産家のような、あぶく銭を出してくれる人がいないとどんなプロデューサーでも成り立たない。複数の事業を展開してて、ポンと何十億も投げうってくれて、『あの映画は俺が作ったんだ!』って。これがハリウッドの世界だよ。映画自体に価値があって、これを作る権利を買うんだという考え方が日本にはない。だから何千万でも回収しなきゃと思っちゃう。対価を払って権利を買ったはずのに、それを失ったと思っちゃうんだよな。だから大衆娯楽主義をはびこらせるしかなかった。
クラウドファンディング? しょんべんみたいな話だよ。人様から2万円ずつもらって、ちりも積もれば1000万円になりました、エンドロールで500人のクレジット出しましたって、そんな映画見たくもないだろ。そんなのどっかの市民ホールでかけて終わりよ。そんなみみっちい話じゃないはずなんだよ、本当は」
「小説や漫画を元にしたウソ話ばかり」 日本で骨太な作品が生まれないワケ
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