多くのアニメ制作の現場ではデジタル作画ツールの導入が進んでいるが、まだまだ過渡期であり、
企業によってもデジタル化の度合いは異なっている。そんな中、フルデジタル制作環境を実現しているのがスタジオ雲雀である。
そんな同社のクリエイター陣が、2月10日に開催されたアニメ業界関係者同士の情報交換、
および人材交流を目的とする「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)」に登壇し、
フルデジタル制作環境への取り組みと成果について語った。
スタジオ雲雀は1979年創業のアニメ制作プロダクション。TV向けアニメを主軸に、ゲーム、CM、プロモーションなど幅広く手がけている。
近年ではアニメブランド「ラルケ」を立ち上げ、漫画やライトノベル、ゲームなどを原作としたTVアニメを制作。
フル3D映像や海外市場向けアニメ、遊戯機器の映像などを手がける「ラークスエンタテインメント」も子会社に持っており、
いわゆる「セルルック3D」を得意としている。ベトナムのホーチミンシティにもスタジオがあり、
5年前からデジタル動画を導入しているのも特徴的だ。
そんなスタジオ雲雀がフルデジタルで制作した代表的な作品が「潔癖男子!青山くん」。なぜフルデジタルで取り組んだのか。
その背景には、これまでの制作フローに対する課題感があったと宮ア氏は言う。
「きっかけは、他作品でデジタル作画を経験してきたこと。
とても効率が良く、これまでの制作進行の仕事には無駄が多いと感じていた。
チェックのしやすさ、リテイクのスピード、車両管理や交通事故に関するリスクヘッジ。
クリエイティブなのか疑問を感じる仕事もアニメ制作には多々ある」
制作環境をフルデジタル化したことで、これらの問題が大きく改善されたと宮ア氏は話す。
「まず車の運転がなくなった。4〜5班体制で回していたが、夜は帰れるようになった。
拡大コピーやスキャンの作業もなくなり、リテイク回しが楽になった」
修正作業も大幅に楽になったという。
簡単な部分は作画監督自身が最終素材に直接修正を加えることもでき、
リテイクのたびに巻き戻っていた作業がひとつの工程で済むようになり、「救える」カットも増えたという。
また、デジタル化により、作業の経過をスマートフォンでチェックすることも可能になった。
「タブレットやスマホがあればどこでもチェックできる。無駄な待機時間がなくなった」
大幅な効率アップは、クリエイターの制作環境の改善にもつながっているといい、
「ギャラの安さも改善していきたい。真っ当な暮らしをするためにもデジタルの導入は武器になる」と言及された。
もっとも、過渡期ゆえの課題はまだ多い。
「作画スタッフがまだ少なく、1クールでも大変だった。デジタル機材の貸出を行い、単価を上げた。
コストダウンした部分は作画スタッフに還元した。それでも1クールやるのも大変なほどだった」
■制作進行の"自動化"、動画と仕上げの融合
デジタル作画以外では、リテイク表をスプレッドシートで作成し、Google Driveを活用したデータ管理を行っている。
また、CG制作の現場のようにプリビズ(どういう映像にするのかあらかじめざっくりと作るムービー)を作成したことで、
全体のタイミングやおおよその枚数管理など、監督や管理者側のチェックがしやすくなったという。
海外とのやりとりでも欲しい絵が手に入りやすくなり、生産性が向上した。
今後は紙の原画で制作を進める作品でも、プリビズを作っていく予定だという。
画像:セッションに登壇したのは、制作部長でプロデューサーの宮ア裕司氏、アニメーター・作画監督の黒澤桂子氏、システム管理・デジタル技術担当の齋藤成史氏
https://news.mynavi.jp/article/20180308-ACTF2018_02/images/001.jpg
画像:同社がフルデジタルで手がけた「潔癖男子!青山くん」制作フローの概要図
https://news.mynavi.jp/article/20180308-ACTF2018_02/images/002.jpg
マイナビニュース
https://news.mynavi.jp/article/20180308-ACTF2018_02/
企業によってもデジタル化の度合いは異なっている。そんな中、フルデジタル制作環境を実現しているのがスタジオ雲雀である。
そんな同社のクリエイター陣が、2月10日に開催されたアニメ業界関係者同士の情報交換、
および人材交流を目的とする「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)」に登壇し、
フルデジタル制作環境への取り組みと成果について語った。
スタジオ雲雀は1979年創業のアニメ制作プロダクション。TV向けアニメを主軸に、ゲーム、CM、プロモーションなど幅広く手がけている。
近年ではアニメブランド「ラルケ」を立ち上げ、漫画やライトノベル、ゲームなどを原作としたTVアニメを制作。
フル3D映像や海外市場向けアニメ、遊戯機器の映像などを手がける「ラークスエンタテインメント」も子会社に持っており、
いわゆる「セルルック3D」を得意としている。ベトナムのホーチミンシティにもスタジオがあり、
5年前からデジタル動画を導入しているのも特徴的だ。
そんなスタジオ雲雀がフルデジタルで制作した代表的な作品が「潔癖男子!青山くん」。なぜフルデジタルで取り組んだのか。
その背景には、これまでの制作フローに対する課題感があったと宮ア氏は言う。
「きっかけは、他作品でデジタル作画を経験してきたこと。
とても効率が良く、これまでの制作進行の仕事には無駄が多いと感じていた。
チェックのしやすさ、リテイクのスピード、車両管理や交通事故に関するリスクヘッジ。
クリエイティブなのか疑問を感じる仕事もアニメ制作には多々ある」
制作環境をフルデジタル化したことで、これらの問題が大きく改善されたと宮ア氏は話す。
「まず車の運転がなくなった。4〜5班体制で回していたが、夜は帰れるようになった。
拡大コピーやスキャンの作業もなくなり、リテイク回しが楽になった」
修正作業も大幅に楽になったという。
簡単な部分は作画監督自身が最終素材に直接修正を加えることもでき、
リテイクのたびに巻き戻っていた作業がひとつの工程で済むようになり、「救える」カットも増えたという。
また、デジタル化により、作業の経過をスマートフォンでチェックすることも可能になった。
「タブレットやスマホがあればどこでもチェックできる。無駄な待機時間がなくなった」
大幅な効率アップは、クリエイターの制作環境の改善にもつながっているといい、
「ギャラの安さも改善していきたい。真っ当な暮らしをするためにもデジタルの導入は武器になる」と言及された。
もっとも、過渡期ゆえの課題はまだ多い。
「作画スタッフがまだ少なく、1クールでも大変だった。デジタル機材の貸出を行い、単価を上げた。
コストダウンした部分は作画スタッフに還元した。それでも1クールやるのも大変なほどだった」
■制作進行の"自動化"、動画と仕上げの融合
デジタル作画以外では、リテイク表をスプレッドシートで作成し、Google Driveを活用したデータ管理を行っている。
また、CG制作の現場のようにプリビズ(どういう映像にするのかあらかじめざっくりと作るムービー)を作成したことで、
全体のタイミングやおおよその枚数管理など、監督や管理者側のチェックがしやすくなったという。
海外とのやりとりでも欲しい絵が手に入りやすくなり、生産性が向上した。
今後は紙の原画で制作を進める作品でも、プリビズを作っていく予定だという。
画像:セッションに登壇したのは、制作部長でプロデューサーの宮ア裕司氏、アニメーター・作画監督の黒澤桂子氏、システム管理・デジタル技術担当の齋藤成史氏
https://news.mynavi.jp/article/20180308-ACTF2018_02/images/001.jpg
画像:同社がフルデジタルで手がけた「潔癖男子!青山くん」制作フローの概要図
https://news.mynavi.jp/article/20180308-ACTF2018_02/images/002.jpg
マイナビニュース
https://news.mynavi.jp/article/20180308-ACTF2018_02/