ジム・ロジャーズ氏は「このままでは20年後の『日本終了』が現実になる」と警告しますが、それはどういうことなのでしょうか。

「人口推計はあらゆる将来予測の中で、もっとも精度が高い予測と言われる。日本の国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2021年に生まれた日本の子供の数(出生数)は、約81万1000人で、前年より3万人減少している。2040年には出生数は70万人前後にまで落ち込む見通しだ」

「その一方で、2040年に70歳になる1970年生まれの人は約200万人もいる。その頃には、70歳は高齢者に区別されていないかもしれないが、このまま現行の社会保障制度が維持できるとは思えない。これは私の意見や感想ではなく、数字が示す事実なのだ」

現在、日本の公的医療保険制度は世界一充実しているとも言われています。アメリカやシンガポールなどは医療費が高額なことで知られていますが、例えば、少し前にシンガポールで難病になった外国人ヘルパーの医療費の請求が18万シンガポールドル(約1800万円)にもなったというニュースを見かけるほどなのです。

どうしてここまで違うのでしょうか。日本では外国人労働者も条件を満たせば日本人と同様に社会保険に加入をすることができます。しかし、シンガポールでは外国人労働者は自分で民間医療保険を購入して高額な医療費に備える必要があるのです。日本のような高額療養費制度もありません。そのため、総額の医療費が数千万円に及ぶ場合もあります。一方で、国民に対しては助成があるために公立病院の医療費負担は緩和されています。

しかし、利用する側からすると素晴らしい日本の医療制度ですが、国民医療費は財政を圧迫しています。

令和元年(2019年)度の国民医療費は44兆3895億円(保険診療の対象とならない費用や、正常な妊娠・分娩、健康診断、予防接種など、傷病の治療以外の費用は含まない)と、前年度に比べ9946億円、2.3%の増加となりました。

医療費は毎年約1兆円ずつ増え続けており、このままだと2040年には67兆円になるとの予測もあるほどです。今のところ、財源別の国民医療費は公費負担が約4割、保険料からが約5割、患者負担が約1割ですが、国が医療費負担をまかないきれなくなれば将来的にシンガポールのように患者負担が増えるリスクもあります。

ロジャーズ氏は「月まで届きそうなほどの債務額」の増大、世界一のスピードで進む少子高齢化、保護主義(移民を受け入れない、存在価値が薄れた「ゾンビ企業」を延命させる、規制緩和をしない)等が20年後に日本を滅ぼすと言います。

また、深刻な危機の影響を一番受けるのは中流階級です。「仕事もお金も失い、子供の教育機会も失ってしまうリスクが高い」と指摘します。日本人の多くは人生で繁栄と平和しか経験をしていませんが、10年後にはその状況が変わり、20~30年後には日本終了のリスクが高まるだろうと言うのです。
以下ソース
https://toyokeizai.net/articles/-/612755