雇用市場の変化がコロナ禍で後押しされている。政府の会議のメンバーも務め、論客の新浪剛史サントリーホールディングス社長の口から飛び出した「45歳定年制度」。その背景は? 実現性は?

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9月9日。緊急事態宣言の最中ということでオンラインで開催された「経済同友会・夏季セミナー」。経済界だけでなく一般にも名の知られた経営者らが参加し、「日本が三流国に落ちていかないようどう変わるべきか」という危機意識のもとに議論が行われた。ここではその中で出た2つのキーワードに注目したい。

■キーワード1「アジャイル」

オイシックスの創業者でオイシックス・ラ・大地の社長を務める高島宏平氏(48)の発言。「先の見通せない時代にはいかに社会をアジャイル化するかだと思う」。

アジャイル…。もともとは開発の現場で使われてきた言葉で「すばやい」「俊敏な」という意味だ。完成図ありきの「ウォーターフォール」と対比される手法で、「アジャイル」はテスト版ができたらすぐにオープンにして、走りながらどんどん開発し直していく手法だ。

高島氏いわく、先の見通せない社会で、しっかり考え抜いてから実行するというのは難しいので「まずやってみて」というアジャイルが向いているという。「たくさん失敗して、方向転換して、正しい方向に」という考え方なので「失敗を許容する文化」が必要だという。

高島氏の「アジャイルの重要性」の発言を受けて、森トラストの伊達美和子社長は、コロナ禍での行動制限の緩和がワクチンを接種した順にとなってしまうと不公平が生じる、などといった議論について「アジャイル型の対応が生きる」との見解を示した。

「接種のタイミングのずれ、そのあとの効果のずれもある。その結果、緩和される順番も(同時でないと)理解していただく(ことが必要)。緩和のあり方も地域や事情に応じてアジャイル型でやっていければいいのではないかと思う」(伊達氏)。

変化のスピードが激しい今は、「検討に検討を重ねて失敗のないよう決断する」のでは、前提条件がどんどん変わってしまい、動き出しづらくなる。「アジャイル」なやり方が社会で受け入れられることは、挑戦しやすい社会にはなりそうだ。


■キーワード2「45歳定年制度」

「定年を45歳にすれば、30代、20代でみんな勉強するんですよ。自分の人生を自分で考えるようになる」。―これまでも「最低賃金大幅引き上げ」などで世の中の議論をかき混ぜる役割を担ってきたサントリーホールディングス新浪剛史社長(政府の経済財政諮問会議議員)はこう提案した。

日本を眠れる獅子のまま終わるわけにいかない、そのためには成長産業への人材移動が必要。企業の新陳代謝を高めるためには、雇用市場は従来モデルから脱却しなくてはいけない。その一環として定年退職の年齢を45歳に引き下げる、個人は会社に頼らない、そういう仕組みが必要だ、と力説した。その上で今の社会では転職のチャンスも十分あるとの見方を示した。


■退職、転職の動向は…

     ===== 後略 =====
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