「ホモ・デウス」などの著書が累計で2千万部売れ、世界の指導者や経営者からも注目されるユヴァル・ノア・ハラリさんが、テルアビブ市内で朝日新聞のインタビューに応じた。ハラリさんは、民主主義の崩壊、人工知能(AI)やアルゴリズム支配に警鐘を鳴らすとともに、個人や集団として立ち向かうための知恵を熱く語った。

 ――私たちが直面する大きな課題とは、何でしょうか。

 「三つあります。核戦争を含む世界的な戦争、地球温暖化などの環境破壊、そして破壊的な技術革新です」

 「三つ目が最も複雑です。AIとバイオテクノロジーの進歩は今後20〜40年の間に、経済、政治の仕組み、私たちの暮らしを完全に変えてしまうでしょう。AIとロボットがどんどん人々に取って代わり、雇用市場を変える」

 「新たな監視技術の進歩で、歴史上存在したことのない全体主義的な政府の誕生につながるでしょう。AIとバイオテクノロジー、生体認証などの融合により、独裁政府が国民すべてを常に追跡できるようになります。20世紀のスターリンやヒトラーなどの全体主義体制よりもずっとひどい独裁政府が誕生する恐れがあります」

ハリル氏のインタビュー動画は記事の最後に。

 ――21世紀の技術は、民主主義よりも専制主義を利すると。

 「20世紀、中央集権的なシステムは非効率でした。中国やソ連の計画経済は情報を1カ所に集めようとしましたが、データを迅速に処理できず、極めて非効率で愚かな決定を下しました」

 「対照的に、西洋や日本では情報と権力は分散化されました。消費者や企業経営者は自分で決定を下すことができ、効率的でした。だから冷戦では、米国がソ連を打ち負かしました。しかし技術は進化している。いま、膨大な情報を集約し、AIを使って分析することは簡単で、情報が多ければ多いほどAIは有能になる」

 「例えば、遺伝学です。100万人のDNA情報を持つ小さな会社が多くあるより、10億人から集めた巨大なデータベースのほうが、より有能なアルゴリズム(計算方法)を得ることになる。危険なのは、計画経済や独裁的な政府が、民主主義国に対して技術的優位に立ってしまうことです」

 ――世界を支配するのは、人間ではなくなるのでしょうか。

 「何も手を打たなければ、新た…
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