【シリコンバレー=中西豊紀】米フェイスブックは14日、最高プロダクト責任者(CPO)のクリス・コックス氏が辞任すると発表した。同氏はマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)の側近で「後継候補のひとり」(関係者)と見なされていた。プライバシー問題などの不祥事が収束しない中、主要幹部の離脱は経営の不安要因となりそうだ。

コックス氏は2005年の創業直後からフェイスブックに所属。当時まだ15人しかいなかった同社の初期エンジニアのひとりで「ニュースフィード」など主要な交流サイト(SNS)の開発や人事を手掛けた。

18年からはフェイスブックのほか写真共有の「インスタグラム」、対話アプリ「ワッツアップ」など主要サービス全般の統括を担当していた。

ザッカーバーグ氏はこの日、社員向けのメッセージを通じ「別のことをしたいというクリスと数年にわたり議論を重ねてきた」とコメント。ただ16年以降「社会にとっての製品改善」で会社が忙しくなり、同氏を引き留めてきたことを明らかにした。

クリス氏も同日、自身のフェイスブックを通じて「会社は今後、表現と安全、プライバシーのバランスを取るプロダクトづくりに向かう」とコメント。ザッカーバーグ氏が6日に表明した「プライバシー重視路線」を受け、辞任のタイミングが固まったとの見方を示唆した。

クリス氏についてはフェイスブック内で「やや無機的なザッカーバーグ氏と異なり対人理解力に優れている」(元幹部)との評価があった。18年に主要サービスの統括となってからは後継候補の声も上がっていたが、結局は会社を去る形となった。同社はこの日、ワッツアップの担当副社長、クリス・ダニエルズ氏の辞任も発表した。

フェイスブックでは18年3月の不祥事発覚以降、インスタグラムの創業者やワッツアップのCEOが会社を辞めるなど、人材流出が相次いでいる。ザッカーバーグ氏は同日、「我々には大事な仕事が残っている。引き続き世界をひとつに近づけていく」と声明を締めくくった。
2019/3/15 8:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42491930V10C19A3000000/