音楽ストリーミング配信サービスを提供しているSpotifyが、EUの独占禁止法規制当局に「AppleはApp Store上で、自社のApple Musicと競合する他社を不当に制限している」と訴えを起こしたことを、Spotifyの創設者兼CEOであるDaniel EK氏が明かしました。

SpotifyはこれまでAppleに対して「App Storeでの手数料徴収は公正な競争を妨げている」と強く訴えていました。これまでのAppleの不当な制限とSpotifyの対策については、Spotifyが以下の専用サイトでまとめています。それによると、2010年〜2011年からApp Storeから強い制限がかかるようになり、SpotifyがApple Watch向けアプリの共同開発を申し入れても拒否されてしまったとのこと。

EK氏は「Consumers and Innovators Win on a Level Playing Field(消費者と革新者が同等な競争の場で勝利する)」というタイトルで、「慎重に検討した結果、SpotifyはAppleに対して欧州委員会に訴えを起こしました。欧州委員会には競争を公正で差別のないものにする責任があります」と欧州委員会への訴訟を明らかにしました。

EK氏によると、Appleは無料サービスから有料サービスへのアップグレードを含めて、Appleの決済システムを介してSpotifyなどの月額有料プランの購入が行われると、その売上から15%〜30%の「Apple税」の支払いを要求するとのこと。そのため、本来の有料プランの額にApple税分を上乗せしなければならず、結果的にApple Musicの月額料金を上回る価格を設定せざるを得ない状況です。

しかし、Appleの決済システムを介さずに購入するプランを用意した場合、AppleはSpotifyに一連の技術的制限を適用するとEK氏は指摘。この制限の中には、メールを通じた顧客とのコミュニケーションも含まれているそうです。Spotifyを初めとした音楽ストリーミングサービスがApp Storeで経験やノウハウを蓄積しづらくなっているのは「Spotifyや他の競合他社をSiri、HomePod、Apple WatchなどのAppleのサービスから徐々に締め出すため」とEK氏は痛烈に批判しています。

EK氏は「私たちは特別な扱いは求めていません」と述べ、以下の3点をAppleに要求しました。

◆1:Apple Musicは、Spotifyや他の競合他社と同じように公正な一連のルールと制限に基づいて競合するべきです。
◆2:消費者は自由に決済システムを選択すべきであり、Appleのような差別的な関税をもつシステムだけに絞ったり強制的に使用を促したりしてはいけません。
◆3:App Storeは、消費者に利益をもたらすマーケティングや宣伝に「不当な制限」を課したり、サービスとユーザー間のやりとりを制御したりするべきではありません。

スウェーデンに本社を構えるSpotifyは、EUの独占禁止法を執行する欧州委員会にAppleの不当な制限は独占禁止法に抵触するとして、訴えを起こしました。欧州委員会の代表は、ウォール・ストリート・ジャーナルに対して「委員会の標準的な手続きの下で審査中です」と、Spotifyからの訴訟を受け付けたことを明らかにしました。

なお、2018年8月から、Spotifyは「Apple税」と制限を避けるために、Appleの決済システムを使った有料プランへの課金を中止し、直接徴収に切り替えています。また、ストリーミングサービスのNetflixも、高すぎる「Apple税」を避けるためにアプリ内課金ではなく直接徴収に切り替えています。
2019年03月14日 11時05分
https://gigazine.net/news/20190314-spotify-files-eu-against-apple/