アップルは値引きと一線を画すことでブランド力を保ち、販売先やサプライヤーに強い影響力を持った。ブランド力や販売規模が世界の先端技術を吸い寄せる求心力にもなっていた。割引や減産が続けば、アップル向けの開発を最優先してきた部品会社にも影響が広がる。

アップルが18年3月に開示したサプライヤーリストによれば、約200社のうち台湾勢が約50社と最多で、日本勢が40社強で続く。iPhoneの減速は台湾や日本の部品会社に打撃となる。

「顧客が注文を下方修正している」。iPhoneのカメラ向けレンズを手掛ける台湾の大立光電(ラーガン・プレシジョン)の林恩平最高経営責任者(CEO)は10日、iPhone向けの不振を示唆した。

台湾の主要IT(情報技術)19社の売上高合計額は、昨年12月に約2年ぶりに前年同月比の減収に陥った。ラーガンは34%、組み立てを担う鴻海(ホンハイ)精密工業も、中国スマホ向けの伸びで補えず8%減収となった。鴻海は18年後半に中国の期間工を中心に10万人規模の人員削減を実施したとされる。

日本では液晶パネルを担うジャパンディスプレイ(JDI)や村田製作所など電子部品企業が影響を受ける。品質にこだわるiPhoneの製造に使う日本勢の工作機械の需要にも影を落とす。

米メディアによるとアップルは今年秋にも新機種3モデルを発売する。3つのレンズを搭載する機種もあるとされ、消費者を呼び戻す狙いだ。

アップルは世界の最新技術を詰め込みiPhoneブランドを築いた。多くのサプライヤーが同社に食い込むために開発競争を繰り広げる。台湾のITアナリストは「今後は成長意欲の高い中国勢などを優先する動きが出るかもしれない」と話す。(台北=伊原健作)
2019/1/13 1:30
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39976990S9A110C1EA2000/