【ワシントン=河浪武史】世界銀行は7日、キム総裁が2月1日付で辞任すると発表した。キム氏は2016年に再選され、2期目の任期が22年まで3年間残っていた。世銀は18年4月に8年ぶりの増資を決めるなど、キム体制下で財務体質の改善に力を入れていた。次期総裁の人選にはトランプ米政権の意向が色濃く反映されることになり、中国向け融資の扱いなどが再び焦点となる。

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世界銀行のキム総裁=ロイター

キム氏の辞任後は、ブルガリア出身のクリスタリナ・ゲオルギエワ最高経営責任者(CEO)が暫定的に総裁職を代行する。次期総裁の選任時期などは未定だ。キム氏は7日に「貧困対策などに従事する世銀総裁職を務めたことは、大変光栄なことだった」などとする声明を発表した。

キム氏は韓国生まれの米国人で、12年にオバマ米前政権が世銀に送り込んだ。世界最大の国際金融機関である世銀は、伝統的に最大出資国の米国が総裁ポストを独占している。キム氏はトランプ政権が発足する前の16年秋に続投が決まり、17年7月から5年の任期で2期目の総裁職を務めていた。

キム氏の突然の辞任は、トランプ政権との確執が要因との見方がある。世銀は18年4月に増資を決めたものの、米財務当局が増資の条件として対中融資の大幅縮小を要求した。キム氏は中国の出資比率を引き上げる一方で、対中案件を縮小する融資ルールの改善を約束し、ぎりぎりで増資を取りまとめた経緯がある。

ただ、世銀は中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)と協調融資を手掛けるなど、資金の安定運用で中国との連携が欠かせないとの立場だ。最大出資国として国際機関へ影響力を行使したいトランプ政権との溝は深まっており、キム氏の任期途中での辞任につながったとみられる。

2019/1/8 3:00
日本経済新聞
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