人工知能(AI)スタートアップのモビルス(東京・品川)は16日、元ソニー社長の出井伸之氏の発言を再現して受け答えするチャットボット「出井ボット」を公開した。投げかけられた質問を認識し、出井氏が監修した内容を回答する。モビルスはAIと人間の自然な対話の実現を目指している。出井ボットを通じて未来の対話の形を表現する狙いがある。

経営者にとって大事なことは何」。16日に都内で開かれた展示会を訪れた出井氏がマイクに向かって話しかけた。目の前には70型ディスプレーに映し出された出井ボット。ボットは口を動かしながら「一つじゃないから難しいけど、企業経営は人間の身体と一緒で健康管理が大事だね」と返答した。出井氏は「生意気だね」と笑った。

モビルスの出井ボットは出井氏の過去の著作や発言を学習し、150の回答を用意している。「若者に伝えたいこと」や「社長時代の逸話」「尊敬する人」などの質問を認識し、自動で回答する。出井氏がモビルスのアドバイザーを務める関係で、開発が実現した。出井氏は「AIの進歩で(電子機器などの)インターフェースが変わる」と期待感を示した。

モビルスの石井智宏社長は「将来のAIとの対話を見据えたシンボルになれば」と期待する。現在の出井ボットは合成音で話すが、今後は出井氏の肉声を再現するなどの改良を重ねる。各種の展示会やイベントなどで公開していく方針だ。
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