NTTデータやDMG森精機、NECなど6社は京都大学と連携し、デジタル人材を育てるための新たな講座を設立した。「情報学ビジネス実践講座」の名称で、2019年度以降に本格的な教育プログラムを始める。6社が1年間あたり合計で約3000万円を京大に寄付し、プログラムの運営費用に充てる。

IT(情報技術)自体と、そのビジネス活用という両面を理解できる人材を育てる狙いだ。

対象は京都大学の学部生・大学院生、一般社会人。それぞれ別にコースを設ける。定員は年間で各100人を予定している。新たに「企業におけるIT概論」という名前の科目を設ける。

内容はIT投資やシステム企画、プロジェクトマネジメント、業務要件定義の実践などを計画している。人工知能(AI)や、あらゆるモノがネットにつながるIoTなど最先端技術の活用法についても学べるようにする。毎週の講義に加えて、夏休みや春休みを利用した演習科目も用意する方針だ。

各社は実際の業務でのIT活用法や経営課題を教材として提供する。NTTデータはシステム開発の手法をテーマに、実務的な教材を提供する。森精機はIoTなどの先端技術を駆使したスマートファクトリーの見学の機会を設ける。NECは小売店での顔認証システムといったビッグデータ解析について、活用事例を教材にすることを想定している。

その他に協力する企業はANAシステムズ(東京・大田)、東京海上日動火災保険、日本総合研究所(東京・品川)の3社。いずれも自社が取り組むIT関連実務を教材にまとめる。

京大内では大学院情報学研究科と経営管理大学院が共同で、カリキュラムの開発と学生への指導を進める。京大の阿曽沼慎司・産官学連携本部長によれば「理系、文系の研究科が協力し、業種の異なる複数の企業と産学連携を進めることは京大として初めての事例だ」という。

京大ではAIやIoTなどIT自体の研究は進んでいるが、技術とビジネス活用の両面を理解している人材の育成は不十分との見方がある。そこで同じ問題意識を持つ企業と連携し、デジタル人材の育成に乗り出す。講座を修了すると履修証明が付与される。学位以外の「お墨付き」を得られる利点を前面に打ち出して、多くの学生を集める考えだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37246510R01C18A1X12000/