夏休みを目前に控え、いよいよ本格化する夏商戦。連日の猛暑もあり家電業界ではエアコンや扇風機の販売が好調だという。かつての「家電の王様」であるテレビでは大手各社が高画質やデザイン性の高さを売りに、フルハイビジョンの4倍の解像度を持つ4K対応の有機ELテレビを売り込んでいる。そんな中、意外なところでヒット商品が生まれている。ディスカウントストアチェーン「ドン・キホーテ」の格安4Kテレビだ。

ドンキが手掛けるのは50型の4K液晶テレビ。同社のプライベートブランド(PB)「情熱価格PLUS」で展開する。最大の売りはその安さ。50型の大画面ながら5万4800円(税抜き)と、家電大手が手掛ける4K液晶テレビと比べて4分の1の価格だ。

 価格の安さもあり、6月15日の発売から予約が殺到。わずか1週間で初回生産分の3000台は完売した。7月14日には追加販売を発表しており、8月下旬に1400台を出荷する計画という。

 追加分を含めても販売台数は5000台にも満たない。ただドンキがPBブランドで販売するテレビの台数は「46型以上で年間1万2000〜1万3000台」(トレンドセレクトMD開発本部の寺尾尚之マネージャー)であり、1週間で年間販売台数の3分の1を販売した計算になる。決してインパクトは小さくないと言える。

 実際、どのようにして格安価格を実現したのか。ドンキの寺尾マネージャーは「液晶メーカーの供給体制が整い、何よりも4K液晶パネルの価格が下落したことが大きい」と話す。さらに、テレビのきょう体や台座部分などの部品をできる限り既存品と共有化したことで、6万円を切る低価格を実現したという。

 格安価格で顧客の心を掴んだドンキ。だが、価格以外にも注目を集めた理由がもう一つある。東芝映像ソリューション製のメインボード(回路基板)を採用したことだ。

「ジェネリックレグザ」と話題に
 実際にドンキの格安4Kテレビを立ち上げてテレビ番組表を表示すると、東芝の液晶テレビ「レグザ」とほぼ同じ画面が表示される。またレグザ同様、動きの速いテレビゲームに適した「ゲームモード」が用意されている。こうした類似点から、SNSを中心に「レグザの高画質が低価格で?」「ジェネリックレグザ」と投稿が相次ぎ、話題を集めたようだ。

 ただ、こうした注目の集め方に対してドンキは困惑していたという。「東芝グループから主要部品を調達しただけであり、共同開発した製品ではない」(ドンキの寺尾マネージャー)からだ。東芝映像ソリューションも困惑したのか、6月19日に自社製基板を使った他社製液晶テレビについて「性能や品質を保証するものではない」と発表している。

 ドンキによると、「調達したメーンボードは地上デジタル放送の放送波をデジタル信号に変換し、液晶パネルに表示する機能を備えたもの」(寺尾マネージャー)という。東芝映像ソリューションズ製のメーンボードは、ドンキ以外にもドウシシャがSANSUIブランドで展開する液晶テレビでも採用されており広く外販されているもようだ。

「大手と競合しない」
 特注品ではないため、機能も限定的。家電大手の4Kテレビでは地上デジタル放送のハイビジョン映像を基に4K映像を作り出しているが、ドンキの格安4Kテレビではこうした複雑な画像処理は施されていないという。「東芝のテレビに施されているような画像処理が織り込まれているわけではない」と寺尾マネージャー。番組表など共通項はあるものの、中身は「大手の4Kテレビと競合する商品ではない」と続ける。

 機能は絞り込まれているとはいえ、6万円を切る価格のインパクトは大きい。4K映像についても米ネットフリックスなどの動画配信サービスを利用すれば高精細な映像が楽しめるし、「4K放送が始まれば対応チューナーを手掛ける可能性はある」(寺尾マネージャー)。4K放送がない現段階ではリーズナブルな商品と言えそうだ。
以下ソース
https://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/090200078/073100166/