ソフトバンクグループは8月6日、2018年度第1四半期の決算を発表。売上高は前年同期比4%増の2兆2728億円、営業利益は前年同期比49%増の7150億円と、増収増益の決算となった。

既存事業の売上を見ると、ソフトバンクやヤフーなどの国内事業が、米Sprintの売上減を支え、増収を記録。営業利益に関しては、前年度に発生したSprintの周波数ライセンス交換差益による一時益がなくなる一方で、英Armの子会社であるArm Technology(China)の持ち株の過半数を売却し、合弁会社としたことで一時益が発生しており、利益の伸びに貢献している。

 そして営業利益を大きく押し上げる要因となっているのが、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先企業の評価益が大きく伸びていること。具体的には、インドでEコマースを手がけるFlipkartの株式売却や、シェアオフィス事業を手がける米WeWorkの公正価値上昇などが、評価益を押し上げた要因になっているとのことだ。

ソフトバンクグループ代表取締役社長の孫正義氏は、同日に実施された決算説明会で、ソフトバンク・ビジョン・ファンドに取り組む理由を改めて説明。「AIは人類史上最大の革命だと思っている」と話し、AI時代を制するための取り組みとして、持ち株比率20〜40%による企業連合体を構築する「群戦略」を取るべく、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立したと話す。

 同ファンドの投資先企業は、一見関連性がないように見えるが、実はAIを活用してそれぞれの分野の事業を再定義していると孫氏は説明。WeWorkや、7月にソフトバンクとの合弁で日本進出を発表した、タクシー配車事業を手がける滴滴出行、焦点距離が異なる多数のカメラを用いてあらゆる被写体を分析する「Light」など、出資先企業のAI活用事例を紹介してその重要性を訴えた。

また孫氏は、英Armの事業に関しても、AIに関する新たな取り組みを打ち出した。Armがこれまで手がけてきたチップセット設計の事業に加え、新たにサービス関連の事業ユニットも設立したという。

 このユニットによる狙いはデータの活用である。Armが設計したチップセットが多数のIoT機器に採用されていることを生かして、今後それらのチップセットにデータを収集する機能を搭載し、それを分析・活用する仕組みをパートナー企業に提供していくとのこと。この事業のためにArmは8月3日に、米国でデータ分析を手がけるTreasure Dataを買収することを発表。同社のリソースを活用して収集したデータのマネジメントを実現していくとしている。

さらに孫氏は今後、Armのほぼすべてのチップセットに対して、機械学習や動態検知などを備える「AI化」を施していくとのこと。これにより、ネットワークのエッジ側にあるチップセット、ひいてはIoT機器が機械学習で自動的に学習し、賢くなっていく世界がやってくると話す。

 孫氏は、エネルギー産業において、天候やイベントなどから自動的に発電需要を予測できるようになるなど、具体的な事例を用いてAIチップセットによる進化のメリットを説明。エッジ処理に強いArmと、クラウドのAI処理に強いNVIDIAに出資しており、なおかつソフトバンクやSprintなどネットワークも手がける企業を持つ強みを生かすことで、そうした進化を実現したいとしている。

 さらに、これまでPC、インターネット、ブロードバンド、モバイルと注力する事業分野を大きく変えていった経緯を振り返り、「いま、同じことをもう1度やろうとしている。売上や利益で貢献していないAIの分野に私の頭の97%を専念させ、ビジョンファンドに取り組む」とも話している。今後は通信事業から、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを中心としたAIの事業に全力を傾ける考えのようだ。
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