『アベノリスク
−日本を融解=メルトダウンさせる大罪−』(講談社)
と題する著書を上梓した。
このなかでインフレ誘導政策について論述した。
日銀は量的金融緩和政策実施でインフレを実現すると公約したが、その根拠が希薄であることを指摘した。
詳細は上掲書にあたっていただきたいが、要点をかいつまんで記述すると、日銀が短期金融市場残高を膨張させても、マネーストックが増大する保証はなく、したがって、インフレ率が上昇する保証もないことを強調した。
そして、実際に黒田−岩田日銀はインフレ誘導を実現できずに現在に至っている。
本年4月発表の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」ではついに、達成時期そのものの表現が削除された。
量的金融緩和政策の結果、日銀資産が膨張している。
日銀が400兆円以上の日本国債を保有し、日銀財務の健全性が著しく損なわれている。
米国は「有事対応」である量的金融緩和政策から脱出する「出口戦略」を進行させて、すでに「金融引締め」に移行している。
日本よりも後に「量的金融緩和政策」を採用した欧州(ECB)も、すでに「出口戦略」に着手している。
日銀だけが取り残され、現時点でもまだ明確に「出口戦略着手」を宣言できていない。
そのひずみが、さまざまなかたちで広がり始めている。
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量的金融緩和政策はインフレを実現させないことが、現実によって証明された。
2012年時点で、「インフレ誘導は可能か」が論争点になり、いわゆる「リフレ派」の人々は、インフレ誘導は可能であると断言していた。
岩田規久男副総裁は、国会の同意人事の審議で、「2年以内に消費者物価上昇率を2%以上に引き上げることができなければ、職を辞して責任を明らかにする」ことを国会で明言した。
しかし、2年どころか、5年経っても2%インフレが実現していない。
そして、日銀の『展望リポート』では、実現する時期の記述までが消滅した。
しかし、岩田規久男氏は就任2年後に辞職せずに、本年春までの5年の任期いっぱい、副総裁の椅子にしがみついた。
日銀副総裁の椅子の座り心地が良すぎて手放せなかったのだろう。