【シリコンバレー=白石武志】3月に起きた死亡事故の影響で自動運転車の公道試験を中止していた米ウーバーテクノロジーズは11日、米ピッツバーグ市などで8月にも試験を再開すると明らかにした。運転席に乗り込み必要に応じて操作に介入する係員については、従来より厳しい選考基準を適用する。ただ、運行規模の縮小は避けられず、開発レースの遅れを挽回するため、今後は外部企業との連携に活路を求めることになりそうだ。

 公道試験中のウーバーの自動運転車が歩行者をはねて死亡させた事故は、3月にアリゾナ州で発生した。同社は直後からピッツバーグとサンフランシスコ、カナダのトロントを含む北米4都市での公道試験を中止し、運行体制の検証と再発防止策の策定を進めてきた。

 地元警察などの調べでは、緊急時の操作を担うはずの運転席の係員が事故直前まで携帯電話で動画を視聴していたとみられており、ウーバーの管理体制に疑いの目が向けられていた。5月には事故のあったアリゾナ州での試験再開を断念する事態に陥った。

 試験再開を目指すピッツバーグでは車両に乗り込む約100人の係員についていったん雇用契約を解除し、緊急時の操作介入などについて訓練を受けた55人を新たに受け入れる。数カ月内の試験再開を目指すサンフランシスコでも同様のルールを適用する見通しで、自動運転技術に対する地元住民らの不安を鎮める狙いだ。

 ウーバーでは運転席だけでなく助手席にも係員を乗車させる安全策を検討しているとみられ、当面の運行台数は事故前よりも大幅に減少する見通し。自動運転技術の開発では走行データの蓄積量が性能を左右するだけに、試験中断に伴う開発レースの遅れを挽回するのは困難との見方もある。

 事故が起きたアリゾナ州ではスウェーデンのボルボ・カーの車両が使われていたが、ウーバーは17年に独ダイムラーからも自動運転車の供給を受けることで合意している。ウーバーに出資する運用額10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は米ゼネラル・モーターズ(GM)系の自動運転技術開発会社にも投資しており、今後は外部企業との連携を模索する中でウーバーが自前の技術開発の優先順位を下げる可能性もある。
2018/7/12 13:15
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32904540S8A710C1TJC000/