西日本を襲った記録的豪雨の影響が広島空港(広島県三原市)にも及んでいる。直接の被災は免れたが、水不足で10日から飲食店は全店で、物販店はコンビニを除き営業を休止している。交通アクセスも頼みの綱である山陽自動車道が依然通行止めで、所要時間も大幅に増えている。離着陸する飛行機をよそに空港内の人は少なく、機能正常化には1週間程度かかりそうだ。

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広島空港は飲食店や物販店が休業、人はまばらだ(10日夕方、広島空港の2階にある出発カウンターやロビー)

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広島空港の1階で唯一営業するコンビニ店は10日夕方は品薄状態になった(広島県三原市)

 【深刻な水不足】

 広島空港に水を届けるはずの沼田川の本郷取水場(同)が水没した。空港や周辺地域に供給する用倉配水池の水位は通常4〜5メートルのところ、9日夕の時点で93センチメートルまで低下。空港内の受水槽の容量100トンの水位が下がらないよう、空港内は10日から1階のコンビニ店のみ営業し、2〜3階の物販や飲食店のすべての営業を中止した。水洗トイレも節水モードとなっておりぎりぎりの運営を余儀なくされている。

 隣接する広島エアポートホテル(同)も一般の宿泊受付をやめた。通常であれば約170室の8〜9割が稼働するが、現在は空港関係者のみの宿泊に限定し40室程度の利用にとどまる。湯船は使えず、温泉があるホテルに移動し、限られた時間で利用してもらう状況だという。

 【自衛隊が給水】

 国土交通省の大阪航空局広島空港事務所は10日に自衛隊に給水車の派遣を要請し、11日午前10時に第1陣の5トンの給水車が用倉配水池に到着、給水した。本郷取水場は16日の再開を目指す。空港までに本郷埜田浄水場(同)や、そこから2つの配水池を経由する。上水が届くまでにはなおしばらくかかりそうだ。

 【山陽道が不通に】

 1993年に開港した広島空港は広島市や呉市、福山市からも遠く、県の中央に位置する。大動脈である山陽自動車道で志和トンネル(広島県東広島市)に土砂が流入し、広島インターチェンジ(IC)から河内ICまでのアクセスが寸断された。緊急車両や生活物資の運搬車などを除いては通行止めが続き、広島の中心市街地を結ぶ空港リムジンバスの全便運休が続く。広島IC―河内IC間の全面開通は16日ごろの見通しで、空港リムジンバスの全面再開はそれ以降になるもようだ。

 【東広島駅を経由】

 広島中心市街地とを結ぶリムジンバスが運行を再開するまでの間、広島市内中心部には東広島駅を経由して行くことができる。8日に山陽新幹線が始発から全線で運行を再開。複数のバス会社が空港―東広島駅間を無料で臨時バスをピストン輸送し、10日からは芸陽バス(広島県東広島市)が800円の有料で運行を始めたためだ。東広島駅での接続時間を除けば所要時間は現在、1時間強程度にまで短縮した。

 【空港に3日間で1500人足止め】

 もっとも、大雨当初は大勢が足止めされた。6日で約500人、7日に約800人おり、8日は約250人。空港を管理する広島空港ビルディング(広島県三原市)から配られた毛布などで1夜を過ごした。

 【一部欠航続く】

 水不足や交通アクセスの混乱などの複合要因で、航空各社は始発便や最終便など一部の便の運行を取りやめている。全日本空輸ではエンジン部品の交換が原因とみられる機材繰りの欠航も出ている状況だ。

 空港の現状は利用者に周知されておらず、困惑の声が上がる。10日夕方、広島市内での出張を終えた帰路だという会社員は「空港と東広島駅を結ぶ臨時バスがあるとの情報を早く発信してほしかった」とぼやいた。同僚から運良くバスの存在を知らされ空港に来たが、新幹線で帰るしかないとあきらめていたという。

 広島空港に到着した5〜6人組の観光客は東広島駅行きの臨時バスを待つ人の列に並んだ。2人組の男性会社員もこの状況を知らず、スマホで東広島駅を発車するこだま号の時刻を調べていた。

2018/7/11 14:12
日本経済新聞
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