ひきこもりの高齢化が深刻になっている。支援団体の「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」による昨年度の全国調査では、ひきこもりの平均年齢は34.4歳に達し、10年前に比べて4歳以上も高くなった。連合会の高知県支部には当事者のいる約80家族が参加しているが、外に出てこられる当事者は数人ほどという。長年、ひきこもる息子と暮らす母親は「私が死んだらこの子の生活はどうなるのか」と悩みは深い。

県支部は2006年に設立された「やいろ鳥の会」(高知市)。当事者が自由に過ごす居場所を同市内の一軒家に設け、親向けの講座も定期的に開いている。

 ひきこもった経験を持つ当事者の男性2人が心境を語ってくれた。

 30代半ばのAさんは中学時代に始まったいじめが原因で不登校になった。通信制の高校を9年かけて卒業したが、対人恐怖のため、進学した介護専門学校を中退。「職業訓練にも通ったけれど、人のことを常に気にして疲れてしまった」と言い、自宅にひきこもるようになった。

 転機は母親が見つけた小さな新聞記事だった。10年ほど前、県のひきこもり支援の集会に初めて参加。最初は2週間に1回、数時間ほどの外出だったが、次第に長くなった。当事者の会では失恋も経験し、「それまでの人生は消極的だったが、いろいろなことに挑戦したくなった。今思うと、外に出るきっかけが大切だった」と振り返る。

 一方、20代後半のBさんは就職先の長時間労働が引き金で1年間自宅にひきこもった。心身とも調子を崩し、今も気分にむらがあるという。それでもアルバイトに出ることもあり、「今の状態は半ひきこもり。働き方の受け皿がもっと多様になってほしい」と訴える。

家族連が相談受け付け
 やいろ鳥の会の山本美香さん(73)は「20年、30年とひきこもる人は少なくなく、会の行事などに出てこられる当事者は全体の1割に満たない」。ほとんどの場合、不安を感じた家族が連絡を取ってくるという。

 山本さん自身、20年間ひきこもった長男と同居しており、6年前に入会した。「同じ苦労をしている人と出会い、悩んでいるのは私だけじゃないと分かった」と話す。

 全国連合会の昨年度調査によると、ひきこもっている当事者のいる家族の平均年齢は64・5歳。過去最高となり、今後場合によっては介護が必要となる家族が増える可能性がある。また、当事者の年齢は全体の29・2%が40歳以上で、40歳以上では平均20年近くひきこもっていた。

 今年3月には、ひきこもりの長期高年齢化に対する声明文を発表。年金世代の80代の親が、無職でひきこもる50代の子の面倒を見る「8050問題」などの実情把握を訴え、問題解決のためには居場所の設置や家族会の存在、訪問支援が重要としている。

 やいろ鳥の会は相談を受け付けている。坂本勲会長(65)は「当事者は家族の中で孤立し、家族は社会の中で孤立してしまう。当事者には自分を責めないでいいよ、一緒に生きていこうよと伝えたい。親も自分たちだけで悩まないでほしい。ひきこもりは子育てや家庭の問題ではなく、社会全体の問題だと知ってほしい」と訴える。
https://mainichi.jp/articles/20180608/k00/00e/040/199000c