コンビニにいま“異変”が起きている。とくに東京都心でその変化が顕著だ。

四国に住む友人は、東京のコンビニの劇的な変化を見て「最初はびっくりした」と言う。

「だってインド人みたいな人がレジにいて、『お箸は何膳にしますか?』とか日本語もペラペラだし、外国人のスタッフ同士の会話も日本語でしょう。出張で上京するたびに外国人スタッフの数が増えてる気がするけど、彼らを見ると『東京に来た!』って実感するんだよね」

彼が言う“インド人みたいな人”というのは、おそらくネパール人かスリランカ人のことだろう。

東京23区の深夜帯に限って言えば、実感としては6〜7割の店舗で外国人が働いている。昼間の時間帯でもスタッフ全員外国人というケースも珍しくはない。中国、韓国、ベトナム、ネパール、ウズベキスタン……名札を見るだけでも、国際色豊かな実体がわかる。

つい数年前までは考えられなかった状況だが、この波は、急速に地方にも広まりつつある。

現在、全国には5万5000店舗以上のコンビニがあり、2017年、スタッフとして働く外国人の数は大手3社だけで4万人を越えた。全国平均で見ると、従業員20人のうち1人は外国人という計算になる。

ご存じの通り、日本は単純労働を目的とした外国人の入国を認めていない。にもかかわらず、「いつから移民の受け入れ国になったんだ?」と不思議に感じている人も多いはずだ。

いったいいま、この国に何が起こっているのか。そして、彼らはいったいどういう人たちなんだろう――。

そんな素朴な疑問から、取材をはじめることにした。

「安いから日本人は働きたくないでしょう」
近所のファミリーマートでよく顔を合わせるウズベク人のJ君は、深夜のコンビニで働きはじめて1年以上が経った。平日の午前中は日本語学校で学ぶ留学生である。

実は、コンビニで働く外国人のほとんどは、J君のような私費留学生だ。つまり、「留学ビザ」で日本に入国し、勉強しながら働いている。純粋な労働者ではない。

コンビニ以外でも、たとえば居酒屋や牛丼チェーンなどで働いている外国人もほとんどが留学生だ。

「夜勤のシフトで時給は1100円から始めて、いまは1300円になりました。時給は日本人といっしょです」とJ君は言う。

「本当は昼間に働きたいけど、夜勤のほうが時給がいいし、人も足りないので、店長にも『夜に入ってほしい』と言われます。うちの店は夜勤の日本人は1人だけ。コンビニは安いから日本人はあまり働きたくないでしょう」

経営者に聞くと、やはり「募集をかけても日本人はほとんど来ません」ということだ。

こうした状況の背景には、コンビニ業界ばかりか日本全体が抱える深刻な問題がある。人手不足である。


現実として全時間帯で人手が足りない店舗もあり、業界内では「24時間営業を見直すべき」という声も出始めている。しかし、いまのところ大手各社が拡大路線を取り下げる気配はない。

業界最大手のセブン−イレブン・ジャパンの古屋一樹社長は、雑誌の取材に対して「24時間営業は絶対に続けるべきだ」と明言し、「加盟店からも見直すべきという要望は上がってきていない」としている。

業界第2位のファミリーマートと第3位のローソンは、深夜帯に一定時間店を閉めたり、無人営業をするといった実証実験をはじめているが、業界トップのセブン−イレブンが「絶対に続ける」と言っている限り、深夜営業を取りやめることは難しいだろう。

店舗数もこれからまだまだ増えていくはずだ。ローソンは、2021年までには現在より4000店舗多い18000店舗まで規模を拡大する意向を示している。

そうした大手チェーンの拡大路線が続く一方で、現場では疲弊感が広がっている。

世田谷区でコンビニを経営するAさんも人手不足に悩んでいる。

「店の前にバイト募集の貼り紙を出して1年以上になるけど、まったく反応がない。平日の昼間なら960円、深夜なら1200円以上提示しても日本人はなかなか来ないんです。

これまで外国人を雇ったことはないけど、今後は考えていかないと店が回っていかない。(シフトに穴が空くと自分が対応するしかないので)自分の身体も心配です」

このように、コンビニで働く外国人スタッフが急増している一義的な原因は、現場の深刻な人手不足にある。ネット上では「外国人が日本人の雇用機会を奪っている」という論調もあるが、実態は違う。

大学生の甥に聞くと、「コンビニで働いている日本人の友だちはいない」そうだ。

「だってキツそうだし。同じ時給ならカラオケ店員のほうがラクそうじゃん」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55833