【シリコンバレー=白石武志】米テスラは2日、中国で進めていた電気自動車(EV)と電池の工場建設計画が前進していると明らかにした。近く立地場所などを公表するという。中国政府は4月に外資系自動車メーカーに対する出資規制を段階的に撤廃すると発表しており、テスラは自動車大手として初めて単独出資での工場建設を目指す考えとみられる。

テスラが2日に開いた2018年1〜3月期決算に関する電話会見でイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が表明した。同社の完成車工場は米カリフォルニア州のフリーモント工場に次ぐ2拠点目となる。米国では電池と車両の組み立て工場は分かれているが、中国では巨大電池工場「ギガファクトリー」とモーターなどの主要部品、車両組み立ての工場を併設するという。

市場開放をアピールする中国政府は自動車分野について、これまで50%としていた外資による出資の上限を段階的に撤廃する工程表を示している。EVなどの新エネルギー車については18年中に出資規制が撤廃される。テスラが単独または過半出資による工場建設の認可を取得できれば、規制緩和の適用第1号となる可能性がある。

テスラはかねて世界最大のEV市場となった中国で現地生産を検討してきた。もともとは17年中に計画をまとめることを目指し上海市などと工場立地に向けた交渉を進めていたが、実現していなかった。マスク氏は単独出資にこだわっているとされ、トランプ米大統領にツイッターで直接、中国に対し外資規制の緩和を働きかけるよう要望したこともある。

2日の電話会見でマスク氏は「中国政府が(外資による)生産施設の完全所有を許可すると発表したことに非常に感謝している」とも述べた。独フォルクスワーゲン(VW)や米フォード・モーターなどのライバルは中国の自動車メーカーとの合弁工場を通じてEVの本格現地生産を始める計画を示している。

地球温暖化に懐疑的なトランプ政権はオバマ前政権が策定した自動車の燃費規制を大幅に緩和する方針を示しており、米国では今後、EVの普及ペースが減速する可能性もある。現在は米国からの輸出に頼るテスラにとって、コスト競争力を高める上で中国での現地生産が不可欠となっていた。

テスラが2日発表した18年1〜3月期決算は最終損益が7億955万ドル(約780億円)の赤字(前年同期は3億3027万ドルの赤字)だった。新型車「モデル3」の量産が難航し、四半期としては過去最大の赤字となった。モデル3についてはあと2カ月で目標とする週産5000台を達成するとしており、18年7〜9月期には収支が黒字化するとの見通しを示した。
2018/5/3 10:58
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30121030T00C18A5000000/