中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)は14日、動画配信サービス事業を手掛ける子会社を米国で上場する方針を明らかにした。動画子会社の新規株式公開(IPO)によってグループの資金力を高め、重点分野と位置づける人工知能(AI)分野の開発を加速。中国ネット3強で収益力で先行する騰訊控股(テンセント)やアリババ集団を追う。

百度は、動画配信サービス「愛奇芸」を手掛ける中国の子会社のIPOに必要な書類を米証券取引委員会(SEC)に提出したことを明らかにした。米メディアによると、同子会社は1兆円規模の価値があるとみられる。百度は親会社であることを維持する方針だ。

愛奇芸は中国最大の動画配信サービスで、テンセントの動画配信サービスなどよりも利用者が多い。中国メディアによると、2017年12月のアクティブユーザー数はパソコンで7600万人、スマートフォン(スマホ)で1億5800万人にのぼる。12月の月間平均利用時間は前年同月に比べて22%増えたという。

「愛奇芸のIPOは動画配信サービスと百度全体の両方にプラスの効果を与える見通しだ」と中国のネット業界に詳しい調査会社のアナリストは語る。17年のコンテンツにかかわる費用は134億元(約2300億円)。収入に占める比率は16年の11%から16%まで膨らんでおり、上場で得た資金でコンテンツの品ぞろえを強化できる。

自動運転・動画を強化
百度のAI強化戦略にもプラスに働く見通しだ。グループ全体の収益力が向上すれば、AIの研究開発に多額の資金を投入できる。愛奇芸の一部株式を売却すれば多額の資金を調達することもでき、自動運転などに振り向けることが可能になるとの見方もある。

百度は17年、ネット検索広告からの依存体質脱却を狙って、AI分野でアクセルを踏んだ。世界の自動車やIT(情報技術)の大手と自動運転の開発連合「アポロ計画」を立ち上げ、中国政府からの支援も得た。AIスピーカーなどの開発にも力を入れ、AIのスタートアップ企業への投資も活発だ。

「18年も私たちはAIの導入で検索や動画配信サービスを強化していく」。百度の李彦宏董事長兼最高経営責任者(CEO)はこう強調し、「さらに自動運転や対話型AIにも力を入れる」と続けた。余正鈞最高財務責任者(CFO)も「AI分野などへの投資を拡大する」とコメントした。

2018/2/14 23:38
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26917710U8A210C1FFE000/