日本は、どの先進国も過去経験したことがないような労働力人口の急激な減少に直面する見通しであり、対策を講じなければ、バブル崩壊後の「失われた20年」ですら古き良き時代にみえるほどの過酷な未来を迎えかねないと、米カーネギー倫理国際関係協議会・シニアフェローのリチャード・カッツ氏は述べる。

現実的かつ効果的な対策の1つは、日本での長期就労を望む外国人労働者の受け入れを拡大することだと指摘。ただし、そのためにはまず外国人労働者に対する不当な扱いを法制度の強化によって改める必要があると説く。

同氏の見解は以下の通り。

<数百万人規模で暮らしが著しく悪化へ>
日本には3つの選択肢がある。1つは、もっと多くの働き手を「輸入」すること。もう1つは、構造改革を通じて生産性上昇率を大きく引き上げること。3つ目は、(それらをせずに)今後数十年間にわたって、1人当たり国内総生産(GDP)がゼロ成長を続けるという未来に直面することだ。

もちろん、日本の人口減少自体は目新しいニュースではない。だが、人口減少をより困難な問題にしているのが、高齢化だ。主な働き手となる20歳から64歳までの人口は、総人口よりもはるかに速いペースで減少している。

そのため、(子供、引退した高齢者、専業主婦・主夫らを含む)非就業者1人に対する、就業者の数はどんどん減っている。1999年に1.2人でピークを打った後、2015年には1.0人に減少、2060年には0.8人になると予想されている。

この結果、たとえ就業者1人当たりの総生産額が現在の年0.5%のペースで成長し続けたとしても、1人当たりGDPは今後45年間、ゼロ成長を余儀なくされる。過去、先進国でこれほど厳しい見通しに直面した国はない。将来、振り返った際、過去四半世紀の失われた数十年でさえ古き良き時代にみえるかもしれない。

1人当たりGDPのゼロ成長はそれ自体、十分にひどい響きだが、これは平均値であることを忘れてはならない。実際には数百万人に上る人々の暮らしが一段と厳しくなることを意味する。すでに、所得分布で10パーセンタイル(下から10番目)に位置する人々の実質個人所得は、30年前と比べて、なんと22%も落ちている。要するに、日本には、生産性上昇率の改善と、より多くの外国人労働者という組み合わせが必要なのだ。

<外国人技能実習制度に海外から厳しい視線>

後者(外国人労働者)について言えば、日本では非熟練・半熟練労働者に対する需要が高い。よって、永住を目的とする移民より、長期就労を目的とするゲストワーカー(一時的労働者)の受け入れを拡大する方が現実的だろう。ただ、そのような人々を数百万人規模で受け入れたいのならば、もっと厚遇する必要がある。

日本で働く外国人労働者の多く(例えば「外国人技能実習制度」で受け入れた人々)が低賃金労働を強いられ、不当な扱いを受けていることは、国内外の複数の報告書ですでに明らかにされている。厚生労働省によれば、全国の労働局や労働基準監督署が監督指導を実施した事業場(実習実施機関)のうち、2012年には79%(2016年には70%)で何らかの労働基準関係法令違反が認められたという(法務省によれば、外国人技能実習生の数は2016年末22.8万人)。

厚労省は、こうした問題に対して法制度の強化で対応していると主張するが、行動が十分とは思えない。状況はあまりにひどく、世界各国の人身売買の実態に関する米国務省の年次報告書にも取り上げられている。

今こそ日本政府は、聞こえのいい約束の数々を実際に法制化すべきだろう。同一労働・同一賃金・同一条件の適用を徹底する必要がある。
https://jp.reuters.com/article/2018-views-richard-katz-idJPKBN1F40LO