北九州市小倉北区の水産仲卸・小売り会社「丸福水産」が、若松区有毛の岩屋漁港で試験していたアワビの陸上養殖に成功し、今月出荷を始める。アワビの陸上養殖事業は県内初で、サイズと数をそろえて安定供給できるのが強みという。勝田潤一社長は11日、養殖場を報道陣に公開し「生産効率を上げ、高齢で漁に出にくくなった人の雇用にもつなげたい」と話した。【長谷川容子】

 事業は2016年12月、市と国が整備した漁港施設で始まった。約350平方メートルの建屋内に15の水槽を設置。海水が陸地側に染み込んでたまった「地下海水」を使ってエゾアワビとクロアワビの稚貝計6万個を投入した。

 夜行性で静寂を好むため、明かりを認識しないよう照明に赤色フィルターを掛け、外の音が伝わりにくい建物構造にするなど工夫。特許技術の酸素ナノバブル(微細気泡)発生装置で水中の酸素濃度を保つシステムも実現させた。

 同社によると、酸素の微細気泡をアワビ養殖に導入するのは国内初。直径60〜80ナノメートルの酸素の泡によってアワビの摂餌(せつじ)効率が高まり、通常の養殖より成長を早められるという。

 当初3センチだった稚貝は約1年で7、8センチになり、同社は「北九州あわび」と命名。12日の発表会で披露した後、地元の日本料理店や宿泊施設に順次4万個を出荷する。勝田社長は「食感、風味、色合いとも天然に近い。将来的には年間30万個の生産を目指したい」と抱負を述べた。
https://mainichi.jp/articles/20180112/k00/00e/040/268000c