2017年3月に発売した家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」のヒットで、任天堂が勢いを取り戻している。18年度のスイッチの世界販売目標について、君島達己社長は「2000万台を達成したい」と述べ、17年度の1.4倍に引き上げる意欲を示した。スマートフォン向けゲームの隆盛などが業績を直撃して不振が続いていたが、18年3月期には9年ぶりの増収を見込む。

 スイッチはテレビにつなぐ据え置き型だが、本体を取り外して屋外でも遊べる点が受け、昨年12月10日時点で販売は1000万台を突破し、17年度の販売目標の1400万台を達成する勢いだ。これに反応して任天堂の株価も上昇。17年末の時価総額は5兆8353億円と東証1部で前年の31位から13位へと躍進した。

 06年に発売されて1億台超のヒットになった据え置き型ゲーム機「Wii(ウィー)」も2年目に販売2000万台超を達成しており、君島社長は「長く遊んでもらうには2年目が重要。あまりゲーム機に触れたことがない方も含め、利用者を増やしていけるかが課題だ」と述べた。スイッチは発売以来品薄が続いたが、年2000万台を生産できる体制を整えたという。

 ウィーや携帯型ゲーム機「3DS」(11年発売)で成功した任天堂だが、それ以降は低迷期が続いた。ウィーの後継機「WiiU(ウィーユー)」(12年発売)はソフト不足が響いて振るわず、さらにスマホゲームが市場を席巻し始めたからだ。今後はゲームソフトを拡充して新たな利用者を取り込み、スイッチを「息の長いゲーム機」(君島社長)に育てられるかが課題になりそうだ。

 一方、任天堂もスマホ向けゲームに参入しており、16年から「スーパーマリオラン」などを配信しているが、客層や課金方法を探っている段階で売り上げへの寄与はまだわずか。君島社長はマリオに限らず、任天堂の人気キャラクターなどが登場するゲームを年2、3タイトル配信していく意向も示した。

◇「ウィーに匹敵する勢い」

 任天堂の君島達己社長は毎日新聞のインタビューに応じた。主なやりとりは次の通り。【聞き手・土屋渓】

 −−スイッチの販売台数は大ヒットしたウィーを超えますか。

 ◆地域によって差はあるが、世界全体ではウィーに匹敵する勢いだ。長時間遊べる据え置き型ゲーム機が、家の中のどこにいても、外に持ち出しても遊べる点が非常に受けたと思う。任天堂のゲームが本当に好きで、早くから買いたかった人にはほぼ行き渡った。

 −−この勢いは続きそうですか。

 ◆我々のソフトはファミリー層向けが中心。今後は我々が作っていない分野については他社ソフトを充実させ、お客さんの層を広げていく。他社からもっと面白いゲーム機が出るかもしれないので、新しい遊び方を考えていかないとすぐに勢いは止まってしまう。

 −−ゲーム業界は浮き沈みが激しいと言われています。

 ◆どんなに良いものもいつかは忘れ去られる。任天堂のビデオゲームの歴史はまだ三十数年。今後、技術の進歩によって、お客様に驚きを届ける方法は変わっていく可能性がある。(収益を)平準化していくには常に独自のアイデアを持つことが大事だ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180112-00000078-mai-bus_all