「実感が乏しい」と言われるアベノミクス景気だが、2018年は厳しさを増しながらも、数字の上では好景気が続くことになりそうだ。その“歴史的成長”を支える要因は三つ。米中向けを中心とした好調な輸出、消費増税前の駆け込み需要、2020年に迫った東京オリンピック・パラリンピック需要である。

だが、手放しで喜ぶのは早計だ。三つの要因による底上げ効果が薄れる可能性が高い2019年10月以降の景気動向は、日本経済の落とし穴になり得る。

米欧が相次いで金融政策の正常化(引き締め)を本格化しており、堅調な輸出がいつまで続くかは不透明だ。また、ひとたび消費増税が実施されれば、駆け込み需要で先食いされた形の消費や投資が冷え込み、景気の足を引っ張ることになるだろう。

さらに、五輪需要はあくまで2020夏までの一過性のもので、その後に厳しい不況が到来するリスクを指摘せざるを得ない。

株価はもはや経済の実態を反映していない
それでも、街やメディアは驚くほど楽観ムードに満ちている。それを後押しするかのように、今年最初の明るい話題をふりまいたのが、内外の株式相場だ。米国の株式市場では、ニューヨーク・ダウ(工業株30種平均)が1月5日まで4日連続上昇し、3日連続で過去最高値を更新した。

同日公表された2017年12月分の米雇用統計は、就業者数と時間当たり賃金の伸びが大方の予想よりも低い水準にとどまり、本来ならば失望売りが出てもおかしくない局面だったが、実際には、FRB(米連邦準備理事会)の利上げペースが緩やかになるだろうと歓迎する向きの方が多かったようだ。

昨年まで6年連続の上昇相場で地合いが良いところに、ニューヨーク・ダウなど海外株高という援護射撃が加わったことで東京株式市場もおおいに沸き、日経平均株価は年明け最初の取引となる4日の大発会から2日連続で、26年ぶりの高値水準を更新した。

「戌笑う」という株式相場の格言があり、戌年は上昇相場になるといわれる。実際、第二次世界大戦後に今日まで5回あった戌年のうち4回で相場が上昇したことから、「早くも戌年相場の本領が発揮された」と満面の笑みを浮かべる関係者も多かった。

確かに以前ならば、この株高を見て「今年は景気も良いようだ」と晴れやかな気分に浸れた。長いこと「株式相場は実態経済を映す鏡だ」と言われてきたことも事実だ。しかし、現実を直視するなら、日本経済と株式相場の関係はすっかり様変わりしてしまったと言うほかない。相場で儲けた一部の投資家の消費が活発になったところで、日本経済が成長することはないのだ。

そのことを端的に示しているのが、ここに掲載したグラフだ。
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下段のローソク足チャートからわかるように、日経平均株価は2012年から2017年までの6年間にわたって急騰して2.7倍に達した。平均上昇率は45%増である。ところが、その間の実質GDPの伸び率(上段)は単純平均でわずか1.25%増に過ぎない。

株価と実質GDPの伸びが乖離した原因の詳細な分析は、本稿では割愛したい。重要なのは、好業績への期待から株価が上がり、企業がそれに見合う収益を上げてきたにもかかわらず、利益が内部留保に回され、設備投資や従業員の賃金(個人消費と表裏一体)に向けられず、株高が経済成長につながらなかった――そんな状況が、グラフから感覚的に理解できることだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54089