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米グーグルの持ち株会社アルファベットは21日、エリック・シュミット会長が2018年1月に退任すると発表した。同氏と歩んだ17年。グーグルは世界的な大企業に膨張し、同氏は若い企業を「大人の視点」で監督するシリコンバレー流ガバナンスの先駆者となった。その後見人の退任は、新たな変化の荒波にさらされるグーグルの今を象徴する。

「最新の科学や技術、慈善活動に時間を費やすことを楽しみにしている」。21日、シュミット氏は自身のツイッターに退任の心境を書きつづった。取締役兼テクニカルアドバイザーで会社には残るが、会社の顔として表に出る機会は減るとみられる。

 シュミット氏の「退任のつぶやき」は今回で2度目だ。11年1月、グーグル最高経営責任者(CEO)を退き会長に専念すると発表し、「日々の大人の監督はもう必要ない!」とつぶやいた。CEOに返り咲く若きラリー・ペイジ氏らの成長をたたえる内容だった。

 01年、グーグルCEOに就いたシュミット氏は、まだ20代だったペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏の2人の共同創業者をベテラン経営者として支えた。04年に米ナスダック市場に上場し、06年には動画共有サイト「ユーチューブ」を買収。09年に自動運転車の開発を始めるなど新市場への布石をいち早く打ってきた。

 売上高は01年からほぼ千倍に拡大。2人の共同創業者も44歳に成長し、今こそ引き際だと思ったのか。シュミット氏は21日のプレスリリースに「今がアルファベットの変革に向けた移行の時だ」との声明を寄せた。

実際、環境は大きく変わりつつある。巨大データ企業に成長したグーグルには世界中で脅威論もくすぶる。17年6月には欧州委員会から24億2000万ユーロ(約3200億円)の制裁金支払いを命じられた。買い物検索で自社サービスを優遇したとの指摘だった。公平な課税や競争、ネットの自由などを巡る議論で、グーグルはこれからも標的にされるだろう。

 通販など他のIT(情報技術)大手とぶつかる場面も増えてきた。米アマゾン・ドット・コムとは人工知能スピーカー、米アップルとはスマートフォンでしのぎを削る。無敵のネット検索で市場を切り開いた成長期と同じように成長できる保証はもうない。

 シュミット氏の後任会長職は執行権がなく、グーグルがかつてのトロイカ体制に戻ることはなさそうだ。今後はモルガン・スタンレー出身でアルファベット上級副社長兼最高財務責任者のルース・ポラット氏と、グーグルCEOのスンダー・ピチャイ氏が、2人の創業者を支える体制で難局に挑むとみられる。

 政治の逆風や予期せぬライバルの登場は企業が成長とともに必ず直面する壁だ。後見人が退き、名実ともに大人として船出するグーグル。その底力が改めて試される。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24974130S7A221C1TJ2000/