更に引用
教育論

私の友人の元Jリーガーは、
「ジュニア期にはオトナが過剰に教えようとすると上手くならない」と言います。
「パスを待つな!もらいにいけ!」「ボールを取られたら取り返せ!」
日本には、試合中、ずっと怒鳴りっぱなしの指導者がたくさんいます。
でも、こういう指導者に育てられる選手は、指導者の指示に反応して動きますから、
指示なしには動けなくなります。
また、怒られることを恐れてチャレンジできなくなります。
そもそも、怒鳴られながらサッカーをするなんて楽しくありません。
いっぽう、育成大国と言われるベルギーでは、
試合中に指導者や保護者が指示を出せば即退場という規則だそうです。
オトナのやってほしいサッカーを押しつけて、彼らの芽を摘むのではなく、
自分で考えてサッカーを楽しむ選手を育てようと考えているからなのです。
ベルギーでサッカーをする子供たちに求められていることは、
規範に遵うことや、練習で習ったことを正確に実現することや、指導者に従順であることではなく、
自分で考えること、挑戦すること、サッカーを楽しもうとすることなのです。
いまの日本のサッカーの指導者たちはもしかしたら指示されて怒鳴られて、強くなったのかもしれませんが、
それがいまのサッカー少年たちにあてはまるかどうかは疑問です。

また私の友人の元プロ野球選手の指導者に、
「なぜ甲子園を驚かせたような選手なのにプロに入って成功しない選手がたくさんいるのですか」ときいたら、
彼はこう答えました。「コーチが潰すんです」と。
ほんらいプロに入るような一流の選手たちは、若くても自分のやりかたをもっています。
むしろスカウトはそういう選手を選んで指名しているのです。だから彼曰く、
彼らはプロに入っても自分のやりかたでやるべきだといいます。
ほんとうに迷ったりわからなかったりしたら、
自分が誰のアドバイスなら聴くのかを自分で見極めて自分で聴くべきだ、と言うのです。
どの若い選手にもアドバイスを求められない中途半端な指導者が、
自分をゆうに越えるような素材に手を出して彼の素材を潰していく、と彼は嘆いていました。
彼曰く、あるパリーグの球団では、指導者が個別にある選手に指導することを固く禁じているそうです。
その指導者の独善的な指導が素材を潰してしまうからだそうです。
その選手への指導はどういうものであるべきか、必ず指導者たちが議論をして選手と相談して決めるそうです。
これからのみなさんは自分でどのように練習し、成果を出していくのかを、
自分で決めてその責任をとっていく必要があるのです。