3%の賃上げを実施した企業は優遇税制を受けられる――。政府は8日にも閣議決定する「経済政策パッケージ」に、法人税の負担軽減を盛り込む方針だ。

「安倍首相は脱デフレのため産業界に賃上げ要請を繰り返しています。今年も3%アップを要請しましたが、企業側はスンナリと受け入れない。そこで優遇税制を持ち出したのでしょう」(市場関係者)

 経営者にしても無い袖は振れない。だが、企業がため込んだ内部留保は406兆円(2016年度末、法人企業統計)を超えている。安倍政権が発足してからの4年間で100兆円増加し、初の400兆円突破となった。

 内部留保は決算書の利益剰余金を指すケースが多い。これに資本準備金を加える場合もある。

「いくら何でも406兆円とはため込み過ぎです。もう少し賃金に回すべきでしょう」(株式評論家の倉多慎之助氏)

そこで大企業の内部留保(利益剰余金+資本準備金、17年3月期など16年度決算)を調べた。トップはトヨタ自動車で18兆851億円とダントツだった。三菱UFJFGも10兆6906億円と10兆円超えだ。以下、NTT(8兆4882億円)、ホンダ(6兆8840億円)、三井住友FG(5兆7941億円)、日産自動車(5兆1666億円)、NTTドコモ(4兆9927億円)、みずほFG(4兆7498億円)と続く。

 ただし、金融業は資本の厚みが必要なので、内部留保は高くなりがちで、「他の産業と同列に扱うのは難しい」(証券アナリスト)。

 3兆円台には三菱商事、キヤノン、KDDIなど日本を代表する企業がズラリだ(別表参照)。

「企業は好きで内部留保を積み上げているわけではありません。経営者は景気が良くなると判断したら、設備投資などを実行します。それができないのは、今後の景気に不安を抱えているからです。先行き不透明な中で、長期的なコストアップにつながる賃上げも実施しにくいでしょう」(東京商工リサーチ情報本部長の友田信男氏)

 企業経営者が景気回復を実感できる経済政策の実施こそが、賃上げへの早道だ。
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