第1回はアパグループ代表の元谷外志雄氏が語る「不動産投資」の極意について――。

私は20歳のときに自分で設計して自分の家を造りました。だから、不動産を持つことに対する思い入れは人よりも強かったと思います。家を持つというのは人生の一大事ですが、やってみれば「案外できるんだな」という感触を若い時分に得ることができました。

それで会社を立ち上げたときに、住宅産業をやろうと思いました。27歳のことです。家を造った経験があったから、最初は注文住宅から始めた。注文住宅から建売住宅になって、賃貸マンション、分譲マンションと進化していって、ホテル事業に行き着いたわけです。

不動産の仕事をしてきた私から見ても、不動産投資は長期投資として非常によい投資だと思います。資本主義の歴史を見るとインフレとデフレは交互にやってきますが、インフレの山と山、デフレの谷と谷を1本の線でつないでみると1つの傾向がわかる。全体としてはインフレなんです。短いスパンで見るから上がったり下がったりで一喜一憂しますが、長く不動産投資を続けていれば必ず資産は増えていく。

建物などの普通の資産は、いわゆる経年劣化によって資産価値が失われていきます。その分、会計的には減価償却で経費に計上できる仕組みになっている。一方、経年劣化のない土地不動産は減価償却できませんが、資産価値が上がるにつれて含み資産が増える。これが不動産の有り難さです。

私の場合、利益の出る事業と減価償却で赤字が出る事業を組み合わせて「損益通算で節税メリットを得る」ということを絶えず意識して、事業を展開してきました。たとえば戸建て住宅の建設販売で利益を出しながら、鉄筋の賃貸マンションを造って償却赤字と損益通算する、という具合です。

そのうち土地を平面的に使う戸建て住宅よりも立体的に利用できるマンションのほうが土地効率がいいということで賃貸マンション、さらには分譲マンションに軸足を移した。マンション事業の節税対策としてホテル事業を始めたんですが、今はむしろホテルにウエートがかかっている。収益が出る事業と償却赤字を得る事業の兼ね合いを追い求めてきた結果、いつの間にかここまで資産が増えていたという感じですね。

住宅ローンならどの銀行も貸してくれる
「若くして自分の城を持て」
「借りた家に住んでいるようではダメだよ」

社員によくこう言うんです。

不動産投資の1番簡単な方法は自分の家に投資することです。たとえばいい物件に出合ったり、素晴らしい投資先を見つけたとして、5000万円や1億円の投資資金を誰が貸してくれますか? ほとんどの銀行は絶対に貸してくれません。

今は金融緩和と思っている人が多いですが、実際には大変な金融引き締め状況にあります。金利がすごく安くなった半面、貸し倒れリスクが取れない金融機関は、貸付先を絶対に潰れないところに絞り込んでいる。

よほど資産があるか、収入がある人でなければ融資してもらえない。しかし、自分の家を持つ場合は違います。唯一、住宅ローンだけは借りられる。家を担保にする住宅ローンは貸し倒れリスクが低いので、どこの金融機関も前向きに取り扱っている。今は全額が借りられる時代です。しかも1%台の低金利で、35年もの長期で借りられる。こんなおいしい時代はもうやってこないですよ。

超低金利という時代環境の恩恵を受けやすい投資をすべきであって、住宅ローンはその恩恵の最たるものです。銀行からお金を借りて、まず自分の家を建てる。お金が貯まったら家を建てようなんて思っていたら、家なんて永遠に建ちません。

自分の家を建てるとき、できれば1部屋を貸し出して家賃が取れるような造りにするといいと思います。昔、1つの住区でありながら入り口が2つあって水道・電気も2つに分けられる構造のマンションを造って販売したことがあります。買った人は皆大喜びで、親子2世帯で暮らす人もいれば、小さい部屋を貸し出して家賃収入を得てローン返済の一助にする人もいた。子供が独立して家族が減ってきたら、自分が小さい部屋に移って大きい部屋を貸すこともできます。

実用(暮らし)と運用が同時にできる家を持てば借金の返済は楽になるし、次の投資にも向かいやすい。まず家を1軒持てば、自宅資産プラス含み資産を評価して次の融資が受けられます。1軒目のローンをきちんと返済していれば信用もつくから、次のローンは組みやすい。

そもそも家は最初の1軒を持つのが大変で、2軒目は少し楽になります。3軒目はもっと楽になるし、10軒目はもっともっと楽。
http://president.jp/articles/-/23772