大和証券は、日本株の5分後の出来高を予測するAI機能を組み込んだ取引システムを、来年9月をめどに日本、アジア、欧州、米州で提供を開始する計画だ。グローバル・エクイティ・トレーディング部のエグゼクティブディレクター、デビット・ディグロー氏がブルームバーグの取材で明らかにした。
日経平均株価が今月、1992年以来の最高値を付ける中、日本株を大口で取引したいというグローバル投資家の需要は増えている。1月から施行されるEUのMiFID2で世界の金融機関は、トレーディング業務での質の向上と付加価値による他社との差別化を図ろうとしている。
アルゴリズムトレーディングを統括するディグロー氏は、「価格ではなく、出来高に注目している点で独自性がある」とし、「機関投資家は大口で注文するので、値段が良くても出来高が伴わなければ買うことはできない」と述べ、結果として価格が乱高下するのを抑えることもできると語った。
大和はTOPIX500の日本企業を対象にする。各銘柄ごとに過去6カ月分の出来高データを入力、出来高の少ない中小型株でも規則性を見つけるなど予測につなげる。投資家はこうした予測技術により安定した執行成績が期待できるようになるという。
出来高予測に顧客ニーズ
みずほフィナンシャルグループも9月、日本株トレーディングで、銀行、生保、ヘッジファンドなど日本を含むアジアの一部の機関投資家に、個別企業の株価が30分、1時間後にどう動くかを予測するAI機能を組み込んだ取引システムの提供を開始した。
このほか、MiFID2の施行に先駆け、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、シティグループ、BNPパリバといったグローバル金融機関がリサーチ業務などの質の向上に取り組んでいる。
大和のディグロー氏は、ニューヨーク、シカゴ、ボストン、サンフランシスコ、シンガポール、香港の投資家を訪れ、出来高予測に顧客ニーズがあることを確認した。新技術の導入により、投資家の満足度が向上すれば、大和のブローカー評価が上がり、注文増加につながると期待している。
ディグロー氏の大和への入社は09年。それまではシティグループやモルガン・スタンレーでデリバティブトレーダーを務めていた。同氏はカリフォルニア大学バークレー校で物理化学の博士号を取得している。
「日本株は出来高が増えている局面にあり、出来高が増えるとボラティリティーが上がるため、より一層予測が大事になってきている」とディグロー氏。これまで投資家は出来高予測を取り入れてこなかったと指摘しながらも「遅過ぎることはない」と述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-11-29/P044XF6S972801