テレビを設置したらNHKに受信料を支払わなければならない制度は合憲か――。長く議論が続く問題で、最高裁が年内にも初の判断を示す。受信料制度の根幹にかかわるだけでなく、ワンセグ付き携帯電話やインターネット配信の議論に影響が及ぶ可能性もある。

25日、NHKが受信契約を拒む男性に支払いを求めた訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)が双方の意見を聞く弁論を開いた。

 放送法64条は「受信設備を設置すれば、NHKと受信契約をしなければならない」と規定している。訴訟の争点はこの規定の合憲性だ。一、二審判決は、NHKが地方向け放送や災害報道で果たす役割などを考慮し、「放送法の規定は公共の福祉にかなう」として合憲とした。

 25日の弁論でNHK側は、受信料制度の必要性を強調した。ドキュメンタリー番組「NHKスペシャル」を例に挙げ、「不偏不党を貫き、視聴率にとらわれない豊かで良い番組を放送するためには、安定財源を確保する手段としての受信料制度が不可欠」と述べた。

 一方、男性側は「NHKと民放の二元体制がいかに重要だとしても、契約は任意にすべきだ」「多チャンネル化時代にテレビを見ることは、NHKを見ることではない」などと主張。放送法の規定は、憲法が保障する契約の自由に反していると訴えた。

 訴訟では受信契約が成立する条件も争点となっている。NHK側は「契約を書面で申し込んだ時点で成立している」と主張しているが、一、二審判決はNHKの主張を否定し、「裁判でNHKの勝訴が確定すれば成立する」とした。判決でNHKの主張が認められた場合、裁判を起こさなくても支払い義務が生じるため受信料の督促がしやすくなる。

 判決はNHKの経営を支える受信料制度そのものに影響する。

 NHKによると、受信料の支払率は2016年度末時点の推計で約78%。NHKは「公平負担を徹底する」として11年以降、受信契約に応じない個人を相手に契約や支払いを求めて提訴している。9月末までに全国281件の訴えを起こした。自宅にテレビを置く人に対する訴訟では契約と支払いを命じる判決が定着している。

 一方、近年はテレビ以外での視聴も可能になり、状況は複雑だ。その代表はワンセグ機能が付いた携帯電話。NHKは受信設備とみなし、自宅にテレビがなくても契約対象としている。しかしワンセグ付き携帯しか持っていない場合に契約義務があるかどうかの司法判断は分かれている。

 今回最高裁で争われている訴訟では、ワンセグ放送は争点になっていない。だが、専門家の中には「判決が放送法の合憲性などを検討する際に受信設備の定義に言及すれば、ワンセグ付き携帯の扱いやインターネット配信の議論を大きく左右する」との見方もある。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22685530V21C17A0000000/