ソニーモバイルが発表した新しいスマートフォン「Xperia XZ1」「Xperia XZ1 Compact」はいずれも、同社が強みを持つカメラなど、非常に高い機能と性能を備えているのが特徴だ。

 Xperia XZ1を開発した経緯として、安達氏は今年日本でも発売された「Xperia XZ Premium」の存在を挙げる。同機種は、1900万画素のメモリー積載型イメージセンサーで1秒間960コマのスーパースロー撮影ができるカメラや、HDR対応の4Kディスプレー、クアルコムのハイエンドモデル向け最新チップセット「Snapdragon 835」を搭載。下り最大1Gbpsの通信速度を実現するなど、高い性能を備えたプレミアムモデルだ。

 そのXperia XZ Premiumが持つ製品としての良さや考え方をより多くの人に届けるために開発したのが今回の2機種だという。プレミアムモデルに合わせた付加価値を作っていくという狙いがあったことから、コンパクトなXperia XZ Compactも、ハイエンドモデルとして開発するのが「自然な流れだった」と安達氏は話す。

中略
デュアルカメラのトレンドにどう向き合うのか
 確かにXperia Xシリーズは、世代を重ねる中で機能・デザイン面の改善を進め、完成度を高めている。だが、同社が同じシリーズの中で改善を進めている間に、スマートフォン全体のトレンドが大きく変化しているのもまた事実だ。

 特に最近、スマートフォンの潮流となっているのが、2つのメインカメラを搭載した“デュアルカメラ”だ。2つのカメラによってボケ味のある写真が撮影できたり、2倍ズーム相当の望遠撮影ができたりするなど、各社がさまざまな特色を打ち出している。

 サムスン電子も8月に発表した「Galaxy Note8」でデュアルカメラを初搭載したほか、LGエレクトロニクスの「LG V30」や、モトローラ・モビリティの「Moto X(第4世代)」など、IFAに合わせて発表された他社のスマートフォンも、すべてデュアルカメラを大きな特徴の1つとして打ち出している。既にiPhoneも「iPhone 7 Plus」でデュアルカメラを採用しており、グローバル展開する主要メーカーの中でデュアルカメラ搭載スマートフォンを手掛けていない企業はもはやほとんど存在しない。今後シングルカメラであること自体、マーケティング的に見て「時代遅れ」と捉えられてしまう可能性が出てきているのだ。

ソニーモバイルはこれまで、イメージセンサーや一眼カメラの技術に強みを持つソニーのリソースを活用することで、シングルカメラでの性能を徹底して高めてきた。だが採用するイメージセンサーの性能が非常に高いがゆえに、同じセンサーを2つ使ってデュアルカメラを実現するとなると、コスト面などでマイナスの影響が出る可能性がある。デュアル化のトレンドによって、高いセンサー技術がかえってあだとなってしまっているようにも見える。

 この点について安達氏に聞いたところ、「他社の取り組みは把握しており、デュアルカメラによる体験に関しては社内でも議論をしているところだ」と答えており、ソニーモバイルでも何らかの検討はしているようだ。ただ、ソニーのイメージセンサーの技術が他社に対する大きな優位性になっていることも事実であり、Xperia XZ1/XZ1 Compactでは現在の路線を発展させることに力を入れたいとしている。

 ソニーモバイルのこだわりの強さがXperia XZ1/XZ1 Compactの高い完成度を実現した一方で、そのこだわりが市場のトレンドに合わせる柔軟性を失わせている印象は否めない。同社のこだわりを徹底して貫きつつユーザーに理解を求めていくのか、それともトレンドを取り入れて大きな変化を見せるのか。次のシリーズでどのような選択をするのかが、注目されることになりそうだ。
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