日産の無資格検査に続き神戸製鋼所でもアルミ製品などのデータ改ざんが明らかになった。品質軽視は重大なトラブルはもちろん、ものづくりの土台を揺るがしかねない。徹底した検証を求めたい。
 
目に余る−という言葉を使わざるを得ないほど、日本の有力製造業で不正が続いている。
 
東洋ゴム工業の免震装置に関するデータ改ざんが発覚したのは二〇一五年三月。五月には東芝の不正会計、一六年四月に三菱自動車の燃費データ改ざんが続いた。そしてこの九月に日産自動車の無資格従業員による新車の完成検査。
 
神戸製鋼では昨年六月にばね用ステンレスの強度データの改ざんが発覚したばかりだった。
 
今回の不正ではアルミ・銅製部材の場合、取引先が求める品質基準を満たさない製品を出荷していた。現時点では法令や日本工業規格(JIS)違反はないとしているが、検査証明書のデータを改ざん。これに管理職を含む従業員が関与し、過去十年にさかのぼった調査でも一部に改ざんが見つかるなど、組織ぐるみであることを経営陣も認めている。
 
鉄に比べて軽いアルミ素材は自動車から鉄道車両、航空機やロケットまで幅広く使われ、国内二位の神戸製鋼の製品は約二百社に供給されている。
 
同社は八日の記者会見で、安全上の問題について「ありえるが、現時点で問題は起きていない」と答えている。
 
事故やトラブルは、例えばねじ一本のわずかな緩みが想定外の状況下で原因になりうる。アルミ素材が公共性の高い輸送機器などに使われている以上、徹底した安全性の確認が必要だ。
 
有力製造業で相次ぐ不正の背景には何があるのか。
 
新興国などとの激しい国際競争、効率化とコスト削減、内部で不正などを指摘しにくい企業組織の体質、経営者の意識などさまざまな課題が指摘されている。
 
心配なのは日本の製造業の競争力の源である「高品質のものづくり」が揺らぎ、劣化し始めているのではないかという点だ。
 
相次いで起きる不正や不祥事は日本の製造業が立たされている重要な局面、分かれ目を浮き彫りにしているのではないか。
 
消費者や取引先の信頼を回復し、ものづくりへの評価を維持し高めるためにはどんな取り組みが必要か。本社から現場まで、直面する課題の真摯(しんし)な検証が必要だ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017101202000139.html