会計監査の見直し議論が8日、始まった。金融庁は同日午前、企業会計審議会(金融庁長官の諮問機関)を開き、監査基準の改定や監査法人の交代制を今年度の議題とすることを公表した。会計監査の質を高め、企業とのなれ合いを排除して監査法人の独立性を高めることを目指す。相次ぐ会計不祥事をきっかけに始まった会計監査改革が実行段階を迎える。

 「監査人と企業が真摯に議論することが重要だ」(三井物産の岡田譲治常勤監査役)、「会計処理の不確実性は高まっている。今のままでいいか、となると課題はある」(日本格付研究所の水口啓子チーフアナリスト)。審議会に出席した委員は改革の必要性を訴えた。

 今年度の課題は大きく2つある。1つは監査基準の改定だ。

 監査法人は企業の経営成績や財務状況を記した決算書類が、適切な会計処理で正しく表示されているか調べる。結果をまとめるのが監査報告書だ。今の監査基準では細かい報告義務を定めていないため、「財政状態を適正に表示している」など簡単な内容にとどまる。金融庁は監査基準を改定し、将来起こり得る事象や規制変更の影響などを監査報告書で丁寧に記すように求める。

 もう一つは「監査法人の交代制」だ。会計不祥事を起こした東芝は同じ監査法人が47年間、継続し監査していた。金融庁はなれ合いをなくす手段とみる。同じ監査法人内で一定期間ごとに会計士を代える制度はすでに義務付けているが、「不正会計の抑止効果を発揮できなかった」(金融庁)。産業界にはコストや継続性の観点から慎重意見も根強いが、審議会で交代制導入の必要性を訴える。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDF08H04_Y7A900C1EA4000/