国土が狭く、資源を持たない日本は、「人」こそが、強さの源泉だった。しかし、静かに、不気味に人口は減っている。強みを失った国で何が起きるのか。その未来の姿を示す。

世界が経験したことがない「超高齢社会」

「'92年に205万人だった18歳人口は、'09年から数年は120万人前後が続く『踊り場』の状態にありましたが、2018年頃(121万人)から大きく減り始める見込みです。

'24年には106万人となり、'32年には100万人を割ると見られています。こうなると、私立大学は当然のこととして、国立大学にも潰れるところが出てくる。

日本を襲う劇的な人口減少は、こうした『国立大学倒産』のような、これまででは考えられなかった出来事を、様々な分野で引き起こします。しかも、これは単なる『予測』ではない。訪れることがもはや『確定』していると言ってもいいことなのです」

こう語るのは、産経新聞論説委員の河合雅司氏である。河合氏の著書『未来の年表』(講談社現代新書)は、人口が減り、社会が縮む日本の未来の姿を描き、ベストセラーとなっている。河合氏が続ける。

「現状は、もはや出生率が改善したからといって人口が増える状況ではありません。2020年には女性の過半数が50歳以上になる、という事実からもわかる通り、そもそも、子供を産める女性が少なくなっていくのです。

出生率が多少上がったところで、子供を産める母数が少ないのだから、少子高齢化・人口減少には歯止めはかからない。こうした現実をきちんと受け止めなくてはなりません」

では、どんなことが起こるのか。縮む日本をまず襲うのは、冒頭の言葉の通り、18歳=若者の減少である。

大学の運営に詳しい桜美林大学大学院の諸星裕教授が言う。

「いま86の国立大学がありますが、一部では経営が立ち行かなくなり、『統合』という策を取るところが出てきます。'07年には大阪外国語大学が大阪大学のひとつの学部になりましたが、もっと有名な大学でも同様のことが起こる。

各大学ともに生き残りのために改革をする。主婦や高齢者が通えるよう夜間や週末の授業をつくり、生涯学習センターのようになるところも出てくるでしょう」

2021年には、「団塊ジュニア世代」が50歳に差し掛かるが、この頃から介護離職が増え始めるという。なぜか。

「総務省の『就業構造基本調査』によれば、『働きながら介護をしている』という人は50代がいちばん多い(ページ末のグラフ参照)。人口の多い団塊ジュニア世代が働きながら介護をせざるを得ない状況になるということ。当然、介護離職の数が増加します」(前出・河合氏)

さらに今後は、介護スタッフがさらに厳しい人手不足に陥ることが見込まれる。'25年には約253万人の需要が見込まれるのに対して、215万人程度しか確保できないとされる。約38万人もの介護スタッフが不足するのだ。

特別養護老人ホーム、ケアハウスなどを必死に探しても、「受け入れられない」と断られる。そうなれば、否応なく家族が介護をしなければならなくなる。こうした人が数万人単位で現れる。

「家族の介護のために、介護スタッフを辞める人が現れ、そのためにスタッフが不足するというケースも出てくるでしょう。完全な悪循環です」(前出・河合氏)
以下ソース
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52268