中国での人件費急騰を背景に、日本企業が製造工程など拠点の一部を国内回帰させる動きが続いている。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)の「2016年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によると、拠点移転を実施または実施予定の458件のうち、中国から日本が8.5%、日本から中国は6.8%となった。日本への移転が上回ったのは、比較可能なデータがある06年度以降初めて。調査は製造業と非製造業の計2995社から有効回答を得た。

 明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは、拠点の日本回帰の主因は「中国の人件費上昇」だと指摘。現地生産の利点は費用面から薄れてきており、日本回帰が「国内の設備投資を支える一要因になっている」と分析した。日本銀行の金融緩和を背景に、円は人民元に対して13年初めから約15%下落しており、企業に日本国内へ目を向けさせる要因となっている。円安は日本からの輸出を価格面で後押しするため、三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は「日銀の金融政策の非常に大きな効果」だと述べた。

 中国からの国内回帰の動きは、11年ぶりの6期連続プラス成長となった日本経済にとって追い風となる。従来は成長の牽引(けんいん)役だった外需に代わり、4〜6月期は内需の強さが見られた。

 ただ日本企業は、今後も成長が期待される海外に進出する傾向が強く、中国からの拠点移転が進んでも日本の産業空洞化は止まっていない。経済産業省によると、海外拠点の生産比率は、1〜3月期に過去最高の30.5%(季節調整値)となった。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/170902/bsg1709020500002-n1.htm