渋滞時のタクシー料金「90秒で80円」は妥当か (東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース
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9/1(金) 6:00配信

 タクシーに乗ると、同じコースを走っていても、その時々で運賃が異なることがある。ある程度運賃を予想してタクシーに乗車したら、思った以上に高かったという経験をしたという人は多いだろう。

■低速下で1分30秒ごとに+80円は妥当か?

 その理由は、日本全国のタクシーのスタンダードとして、距離運賃とともに「時間距離併用運賃」を導入しているからだ(高速道路では適用なし)。

 タクシーに乗ると、運賃の内訳として以下のような表示がある(東京都内の例)。

初乗運賃:1.052kmまで……410円
加算運賃:その後237mまでを増す毎に……80円
時間距離併用運賃:時速10km以下の走行時間について、1分30秒まで毎に……80円

 この最後にある時間距離併用運賃によって、同じ距離を走っても所要時間が異なれば運賃も変わってくる。1分30秒(90秒)といえば、長めの信号待ちをしたり、ちょっとした渋滞にはまればすぐ経過してしまう。これが、走っていなくてもメーターがどんどん上がってしまうカラクリだ。

 この制度はいったい、どのような経緯で導入されたのだろうか。そして、時速10km以下で時間ごとに運賃がかかる仕組みは、本当に妥当だろうか。

 時間距離併用運賃制度ができたのは、昭和40年代の高度経済成長期のこと。当時、都市部では交通渋滞が蔓延しており、タクシーの収益ロスをカバーするため業界側が提唱し、1970(昭和45)年から導入された。

 当時の国会審議の議事録を見ると、この運賃導入の目的は大きく2つ主張されていたことがわかる。タクシー運転手による乗車拒否を抑制することと、事故の低減である。

 第1の乗車拒否についてだが、時間距離併用運賃だけだと、渋滞が起きれば運転手は割を食う。したがって、渋滞している場所へ行きたい客の乗車を拒否する運転手が出た。第2の事故も原因は同じで、運転手がなるべく早く目的地について利益を出そうとするので、信号での見切り発車などが相次ぎ事故が多発した。

 以上の問題を解消するために、走行距離は進まなくても時間で運賃計算することを可能にすべきだ、という主張である。

 経済学の立場から「機会費用」という言葉でも説明されている。タクシー運転手が渋滞する目的地に客を運ばなければならない場合、渋滞しない目的地に行く乗客を運んでいれば得られたであろう利益を機会費用とし、そうした選択肢を持てないタクシーの料金にそれを転嫁するという考えである。たとえ車が動いていなくてもエンジンをかけ、エアコンも作動し、運転手はサービスに従事しているのだから、その分のコストの回収は当然だという考え方は理解できる。