これまで現金主義が根付いていた日本にも、キャッシュレスの波が訪れている。インバウンド、2020年東京オリンピックなどキャッシュレスを加速する動きや日本マーケットの展望は? 世界基準でキャッシュレスを牽引するビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社安渕聖司代表が語る。

――世界に比べて、日本はいまだに現金主義が強く残る国。グローバルカンパニーでの経験も豊富で、海外の金融事情にも精通している安渕代表から見て、日本の現金主義はどう映っていますか?
安渕:確かに日本では現金決済の割合がまだまだ大きいですが、今、その流れは大きく変わりつつあります。政府の方針は今後10年で電子決済比率を現状の2倍の40%へ倍増させること。
その背景にはインバウンドの増加や2020年の東京オリンピックがあります。多くの外国人観光客は、キャッシュレス文化の国や地域から訪れるわけで、その受け入れには、あらゆるシーンでのキャッシュレス化が必然です。

現金主義は「伝説」になりつつあると思います。なぜ日本は現金主義なのかを考えるより、今、まさに現金からキャッシュレスへ時代が変化していることこそが重要です。
そもそも日本人は変化を受け入れ、スピード感をもって変化するのが得意な国民です。スマホが登場して約10年。2020年にはスマホ普及率は85%になるといわれていますが、携帯電話が普及した1990年代以降、ものすごいスピードで進化してきたのが日本です。決済の世界でも、まさに同じことが今起きているのです。

――そういう流れの中で、2020年は大きなターニングポイントとなりそうです。
安渕:2020年は、キャッシュレス、非接触型決済の節目が確実に変わるトリガーとなるでしょう。Visaはオリンピックのワールドワイドパートナーで、ウエアラブル決済などのイノベーションも推し進めていきます。

リオではペイメントリングといってチップを埋め込んだリングで支払うという実験が行われましたが、東京2020オリンピックでも新たな進化を見せたいと思っています。オフィシャルショップでは、長い列に並ぶといったストレスなくスムーズに買い物ができるシステムも実現できるとよいと考えています。

――政府がキャッシュレス化を急ぐのは、外国人観光客への対応以外にも理由があるのですか?
安渕:現金はいろいろな面で、社会的コストが非常に高くつきます。駐車場のパーキングメータ
ーや自動販売機のお金を集めて数え、おつりを用意する。閉店後の店で現金を1円単位で集計し、売上伝票と突合する。さらに、利用者にとっても、ATMまで足を運び、現金を出し入れするという負担があります。また、現金の場合、紛失や盗難による損失もある。
キャッシュレス化はこれらのさまざまな社会的コストを軽減し、社会全体の生産性をあげることができます。

例えば弊社の非接触決済型インターフェイスである「Visa payWave」では、支払い時間は1回につき現金での支払いに対して約6秒短くなります。時間の効率化、という点でもキャッシュレスの果たす役割は非常に大きいものがあると思います。

――日本はキャッシュレスに向けて舵を切り出したところですが、海外でのキャッシュレス事情はどうなっているのでしょうか?
安渕:米国での電子決済比率は現在約40%。これは、日本政府が10年後の目標値としている割合です。米国型スタイルは、スーパーやコンビニなど少額の日常使いはデビットカード、旅行や家電など高額な買い物はクレジットカードという傾向です。日本でも米国に近い使い方がされていますね。

北欧はもっとキャッシュレス化が進んでいて、「No Cash Please」という現金お断りの看板を掲げている店も見かけます。スウェーデンでは、現金を見たことがないという子どももいるほどです。いずれ日本でもギフトカードでお年玉をあげる時代が来るのではないでしょうか。
以下ソース
https://newspicks.com/news/2435886/body/